509.迷いと不安 ページ13
＜セフン＞
俺たちは、じっと、VIPルームの中でチャニョリヒョンとカイの話が終わるのを待っていた。
これが終われば、カイとはおさらばかもしれないのか…と思うと、捨てられたとはいえ、少し寂しさが湧いてくる。
机を挟んだ向こうの椅子ではジョンデヒョンが俯いて落ち着きが無さそうに指を忙しなく動かしている。
隣ではスホヒョンがすました顔で本を読んでいる。でも、何回もページを行ったり来たりしてるの、俺気付いてるからね。集中できてない。
ヒョンたちも、きっと同じ気持ちなのだろう。
自首をしたベッキョニヒョンの時とは違って、カイとの訣別は俺たちが決めた。
だから、迷いも不安もある。
カイとチャニョリヒョンがどんな話をしているのか。
チャニョリヒョンは本当にあのファイルを警察に提出するのか。
色々気になるけど、話し出す者もおらず、そのまま静かに時は過ぎていった。
コンコンコン
突然、ドアが叩かれた。
…話、終わったのかな。
俺は、スホヒョンと目を合わせる。
そして立ち上がり、ドアへと向かった。
ガチャ
ドアを開けると、チャニョリヒョンが目の前に立っていた。
「…終わったの？」
チャニョリヒョンが何か意を決したような表情をしていたからそう聞く。
「うん、カイとの話は。俺、今からAに会いに行こうと思う」
「ヌナに？」
「うん。Aにも話を聞きたくて。これ、その後でいいかな」
チャニョリヒョンは小脇に抱えたファイルを指しながら言う。
「…スホヒョンに聞いてみる」
俺はそう言って、チラッとカウンター席に座って項垂れたまま動かないカイを一瞥し、ドアを閉じた。
「…だってさ。スホヒョン、いい？」
「まったく…焦らすなぁ」
はぁ、とため息を吐きながら本を閉じるスホヒョン。
「セフンが送ってやってくれ。そうしてAとの話が終わったらそのままチャニョルを警察に送り届けて」
「…わかった」
「…カイは、どんな様子だった？」
「うーん…俯いてて表情は見えなかったけど、気分良くは無さそうだった」
「当たり前だろ」
「…カイは、俺が面倒見るよ。時が来るまで」
俯いていたジョンデヒョンが顔を上げて、優しく笑いながらそう言う。
「うん、分かった。じゃあチャニョリヒョン送ってくる」
「いってらっしゃい、気をつけて」
俺はまたドアを開けた。
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作者名：LUKE | 作成日時：2021年12月22日 5時
