507.ほんの一部 ページ11
＜チャニョル＞
「ヒョンがお人好しなのはよく分かったよ。でもこの事実を聞いて、どうするつもりなの。警察に連絡する？無駄だよ。警察と俺らは繋がってるから」
そうだ、確かテミンが関係しているだよな。
「警察に連絡したとしても、テミンがかき消す…まぁ、彼は自分の得になることしかしないから、友人を切ることができるんだろうけど」
そう言って、カイはファイルを床に投げた。
「うん。たとえ俺が警察に、お前たちが行ってきたことを話しても、取り合ってもらえないだろうな」
「じゃあ、なんで俺と話をしようと思ったの」
そうだ、俺が、ここに来たのは…
「Aの、ためだ」
その名を出すと、項垂れていたカイは顔を上げる。
「言われたんだ、ベッキョンに…Aをよろしくって」
『…チャニョラ、言ったよな』
『え…？』
『俺に何かあったら、Aのこと頼むって』
「…ベッキョニヒョンに言われたから、なの？」
「あ、いや、それもあるってだけ…その…俺…」
カイが、伸びた前髪から鋭い目を覗かせてるから日和ってしまった、けど…
俺は、言うんだ。
「俺は、Aのことが好きだ。幸せにしたいと、思う」
言った。
Aを誰よりも愛する男の前で。
「…チャニョリヒョンに、何ができるの」
ハッ、と笑うカイは、彼の悪い一面を覗かせている。
俺に、出来ること…
『カイみたいに…Aのことを理解するって方法じゃなくて…俺に出来ることで、Aの力になりたい！…なんて、どうかな？』
『…ありがとう。やっぱり…私の目は、間違ってなかった』
「俺は、お前みたいに、Aのことは理解できないかもしれない。でも、俺は…」
『仕事はちょっぴり苦手かもしれないけどさ…でも、違うところで、たくさんの人を救える人だと思うよ』
「お前とは違う愛し方ができると思う」
「…へぇ、随分な自信だね」
ライバルだと知った途端、カイは目をぎらつかせた。
でも、日和ってはいけない。
俺は、Aを救うと決めた。
「俺…普通のサラリーマンだったんだよ。ちょっぴり仕事が苦手な。でもさ、Aと話すようになって、お前たちと出会ってから…俺が今まで世界だと思っていたものは、まだまだ本当の世界のほんの一部だったんだなって思い知った」
『世界のたった70億分の1でしかないお前のちっぽけな世界の常識が、全世界に通用すると思うなよ』
ベッキョンが言った、その通りだった。
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作者名：LUKE | 作成日時：2021年12月22日 5時
