146.赤いネクタイ ページ45
＜チャニョル＞
「つ、次、どこ行こっか！」
俺は自分の中の邪念を消すように話題をそらす。
「え…あ…えっと…ネクタイは、どう？」
「へ？」
「チャニョルに合うネクタイ、探してあげる！」
そう言って、キラキラと笑うA。
「…うん、ありがとう、楽しみ」
俺は今、愛しい人を見る穏やかな目をしていると思う。
Aもキラキラした顔から、優しい顔になった。
「そうと決まったら、行こっか！」
「え、大丈夫？疲れてない？」
「うん、大丈夫！」
その顔を見たら、疲れなんて吹っ飛ぶんだってば。
「あ、あのお店良さそう！」
俺が1人で入るには敷居が高そうな店。
Aは俺の手を取り、どんどん中に進んでいく。
「わぁ…どれもいいなぁ…」
Aは色んなネクタイを手に取っては俺の胸元に当てて顔と見比べてくる。
「うーん…チャニョルがかっこいいせいでネクタイが霞む…」
自然にぽろっと言うA。
本人は気にしてないようだが、俺の心にはずっしりくる…心臓に悪い。
「…ボルドーか。いいね、素敵！これにする！」
俺がAのことを考えている間に、Aはネクタイを決めたようだ。
「すいません、これください」
そう言ってレジに持っていくA。
「さ、さすがに俺が払うよ」
「いいの！チャニョルにプレゼントしたいの」
「いやぁ…申し訳ないから…」
…これ、いくらするんだろう…。
「貸しを作るのは好きなの！…ここで払ったら嫌いになるからね！」
「うっ…」
またそう言われると…俺は弱い…嫌われたくないもん…。
はぁ…かっこ悪…。
「はい、これあげる！」
今度は俺が落ち込んでる間に会計を済ませたらしい。
しかもラッピングしてある。
「あ、ありがとう…」
素直に嬉しくて受け取ると。
「ご夫婦ですか？」
店員さんが話しかけてきた。
「あっ、いえ、結婚はしてないです…」
結婚は、って…それじゃあまるで…
「じゃあ恋人同士なんですね〜微笑ましくてつい話しかけちゃいました！」
こ、恋人、かぁ…。
ちゃんと、他人の目にはそう見えているらしい。
「ありがとうございます…」
「お幸せに！」
店員さんはにっこりと笑ってくれる。
「はい！」
俺がつい大きな声でそう言うと、店員さんも、Aも笑っていた。
「あ…ついおっきい声…恥ずかし…」
「あはは！チャニョル、行こっか！」
「う、うん」
まぁ…Aが笑ってくれたからいいか…。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月14日 10時
