130.恋は盲目 ページ29
＜チャニョル＞
恋は…盲目だな…。
こんなの、はたから見たらバカなことなのに、平気でできちゃうんだから。
「『えへへ、見つかっちゃった〜』」
スマホからも、すぐそばからも聞こえる愛しい声。
いいんだ、盲目で。
「…なんか恥ずかしくなってきちゃった…」
Aはそう言って電話を切っちゃったけど。
「あ、そうだ居酒屋探すんだった…」
俺も冷静になって居酒屋探しを再開する。
Aは俺にもたれかかってくる。
「どこでもいいよ…チャニョルがいてくれるなら」
…かわいいことをさらっと言うんだね。
Aはしたい時にキスしていいって言ったけど…そんなん、しょっちゅうだよ。
理性が抑えられなくなっちゃうから、程々にね。
「ん…ここにしよう。歩いて5分くらいだけど…歩ける？」
「うん！歩く！」
相変わらず手を繋いで歩く、たった5分の道のり。
ゆっくり、ゆっくり。
「チャニョル」
「ん？」
「私…こんな気持ちになったの、久しぶりだよ」
「…俺も」
「嘘！チャニョルは絶対モテるのにー！」
「モテないよ…それ褒めてる？」
「褒めてるよ！かっこいいし、気配り上手だし、面白いし…」
「ちょっと待って、それ以上続けられたら俺…」
「チャニョル顔真っ赤！」
…Aもだよ。自分で気付いてないの？
恋は、盲目だね。
「着いたよ、入ろ」
さっき決めた居酒屋に入る。
けっこうガヤガヤしてる。大丈夫かな。
「２名さまですねー！奥の個室へどうぞ」
案内されるままに個室へ入る。
2人きり。
外の音もだいぶシャットアウトされてる。
うわ、なんか急に緊張してきた…。
そんな俺などつゆ知らず、Aはメニューと睨めっこ。
「ワイン…は昼飲んだし…ビール…ビールか…しばらく飲んでない…カクテル…カタカナ多すぎ…」
まるで時代に取り残されたおばあちゃんみたいに目を細めてメニュー表を見回すA。
「あははっ…A、ビールにする？」
「うん！チャニョルと一緒がいい！」
結局そう言って、メニュー表はパタンと置いてしまった。
「あとは…何頼もうか」
「全部、チャニョルの好きなものがいい」
「え、好き嫌いとかないの？」
…ミンソクさんから聞く限り、けっこう多そうだったけど。
「好きな人の好きなものは…好きになりたい、じゃん？」
じゃん？、とか上目遣いで言われましても…。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月14日 10時
