129.見つけた ページ28
＜チャニョル＞
水族館を出ると、日が暮れていた。
「やだなぁ…夕方って俺、嫌いなんだよ。どんだけ楽しく友達と遊んでてもさ、門限があるからってみんな帰っちゃうんだ」
「それ、子どもの時の話でしょ？私たちは大人よ」
Aはにっこり笑う…少し、妖艶に…あっぶね！
俺何考えてんの！？
「そ、そろそろ、帰ろう」
「…嫌」
Aは…わがままだ。
好きな人に対しては性格が変わるタイプ？
なにそれ、俺にしか見せない顔って感じでめっちゃいい…。
「じゃあ、どこ行きたい？」
「うーん…居酒屋！」
「えっ、居酒屋？そんなとこでいいの？」
「そんなとこって…何？」
お金持ちなAのことだから、フレンチのディナー！とか言うのかと思った…。
「行ってみたかったの、居酒屋。久しぶりに。ずっと家に篭りっきりだったし…ギョンスはあんまり好きじゃないみたいで」
…てことは…
「ギョンスさんと、行ったことない？」
「うん」
…お、ちょっとちょっと〜…いいじゃないか…。
「分かった。お店探すから待ってて。そこのベンチ、座ろ」
道端にあったベンチに2人で腰掛ける。
俺はスマホを取り出して、付近の居酒屋を検索する。
…A、うるさいところ、苦手なんだよな。
口コミを見て、なるべく静かそうなところを選んで…でも高級そうなとこだったらAにとっていつもと変わんないだろうし…と探していると。
「ねぇ、チャニョル。番号教えて」
Aはそう言いながらスマホを取り出した。
「持ってたんだ」
「うん、一応ね。あんまり使い方分かんないんだけど…」
確かに、なんとなく疎そうだ。
「いいよ。番号、これ」
スマホの画面で見せると、Aはその番号を繰り返し繰り返し、何度も呟いた。
「登録の仕方、分かんない？俺がやろうか？」
「ううん、大丈夫。セフナが、知らない間に消しちゃうから。覚えないと」
…セフン、怖。束縛系かよ…。
Aも大変そうだなぁ…なんて、他人事じゃないんですけど。
「覚えた！」
そう言って、Aはスマホを不器用にいじり、電話の画面にした。
そして、登録していない番号から電話がかかってくる。
『もしもし？』
「あはは、もしもし？」
『今どこにいると思う？』
「んー？どこかなぁー」
隣にいるよ。君の、1番近くに。
「わかんないなぁ…どこかなぁ〜」
そう言いながらAを抱き締める。
「見つけた」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月14日 10時
