124.俺だよ ページ23
＜チャニョル＞
…俺だよ、それ。
すっごく言いたい。きっと信じてはくれないだろうけど。
でも、嬉しい。俺が言ったおかげで、Aが毎日料理するようになったなんて。
「夫が亡くなってから、料理はしばらく控えてたので…ご飯はジョンイナに準備してもらってたんです、ずっと」
「ジョンインくんですね、昨日一緒にお墓参りした」
「えぇ。そうです…ジョンイナ、何か失礼なことしませんでした？」
「いえ、ジョンインくんは素敵な好青年でしたよ！」
「そうですか…なら良かった」
よし、ジョンインの話が出た。
ここで、１つ作戦を決行する。
「この家、セフンくんも住んでますよね？」
「えぇ…セフナと知り合いで？」
「はい！セフンとは、ジョンデの、カフェで…知り合って…」
セフンとの繋がりがあることをアピールして、信頼度を上げようと思ったのだが。
繋がった理由を作る時に、どうしてもジョンデの名前を出さなきゃいけなかった。
…実際に口に出すと、結構、キた。
「あぁ…ジョンデのカフェ…」
「えぇ。俺も常連で。セフンとはそれで仲良くなりました」
「…ジョンデは、悪い人じゃありません」
Aはジョンデのこと、知ってるのか…？
「彼は…奥さんを亡くしたんです…私と、同じです。同じ事件で…」
知ってるよ。そこから、あなたは。
「すみません、辛いことを思い出させてしまって」
「あ、いえ！えっと…セフナは、失礼なことしてませんか？」
「はい！結構懐いてくれてて…人より感情が少ないだけなんですよね」
…実際はめっちゃ嫌われてるけど。
後半は、ジョンデの言葉を引用した。
「そうなんです…よく分かってくださって…なかなかいないんですよ、理解者が、セフナには」
「そうですね…俺、ベッキョンとも仲が良いので」
「え、ベッキョナとも？」
「はい。高校の同級生です」
「まぁ！そうなんですね！すごい偶然！」
これは本当だ…仲は良くないけど！
このくらいで、信頼はされたかな…。
「あの、家にこもりっきりっておっしゃってましたけど…どこか行きたいところとか無いんですか…？」
「行きたいところ、ですか…ギョンスが亡くなってから、すっかり出不精なものですから…」
「ギョンスとの、思い出の場所は？」
「思い出の、場所…」
Aは俯いた。
「たくさん…あります。ギョンスは私をたくさん連れ出してくれました。例えば…水族館、とか…」
「水族館…」
.
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月14日 10時
