4.不思議な人 ページ5
.
少し考えて、２つ、思い浮かんだ。
まず１つは、タメ口であること。
昨日会った時は敬語で話しかけてきたのに、この店に入ってからは少し馴れ馴れしい。
一度会っただけで、距離を詰めてくるタイプなのだろうか。
自分のお店だから、リラックスしてるだけか。
２つ目は、昨日も今日も親切に私に話しかけてくれて、傘を貸してくれようとしたり、お店で今こうやって休ませてくれているのに…タメ口でも、あるのに…
微妙に、距離を感じること。
普通、ここまでしてくれる人なら、昨日何があったのか、一応聞くのではないか？
悩みを聞こう、という気持ちまでは持たなくとも、普通、気にならない？
逆に、気にならないならなぜ私に関わってくる？
聞かないでくれる、というのも、彼なりの優しさ、なのだろうか。
あぁ…モヤモヤする…。
「…あの」
「ん？」
「…聞かないんですか？」
「何を？」
「昨日、何があったのか…」
別に、聞いてほいわけじゃ、ないんだけど。
彼の違和感が、なんとなく、引っかかった。
「あー…話したいのなら、話してもいいよ」
彼はそう言いながら手を動かした。
「別に…話したいわけじゃ、なくて」
「そう。なら大丈夫だよ、話さなくても」
優しい声色で、彼はそう言う。
「…気にならないんですか？」
「うーん…まぁ、気になるけど…聞いても、意味無いから」
「意味無い？」
「あー…」
彼は言葉を濁すように少し黙って。
「…コーヒー、冷めないうちに飲んでね」
そう言いながら彼は、エプロンを外し始めた。
「ちょっと出かけてくる。飲み終わったら帰っていいから」
「え？」
出かけてくる、なんて…客1人を、店に置いて…彼は外に出てしまった。
私は唖然として、彼が出て行った出入り口のドアを見つめる。
いや、店の中からOPENの看板が見えるということは、まだ店は開いてなくて、私は客ではないのか…なんて、そんなことはどうでもいい。
…不思議な人だ。
コーヒーはもう冷めていた。
元から、あまり熱くはなかったし…猫舌の私には助かったけれど。
帰れ、と言われても、案外ここは心地よくて、なんだか帰りたくない気もする。
こじんまりしていて、アットホームな感じがして。
私はちまちまとコーヒーを飲んだ。
そして、最後の一口を飲み終わると、少し寂しい気もした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 84人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「EXO」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LUKE | 作成日時：2021年9月7日 9時
