勿忘草は誰が為に (ページ37)

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36.事のいきさつページ37

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『今度の日曜日、デートしよっか』

『うん、いいよ。どこ行く？』

『んー、植物園とか？A好きでしょ？』

『うん、好き！』

付き合ってから2人は、植物園などの自然が多い場所によく一緒に行った。

ジョンインは、自然にも、Aにも癒されていた。

はっきり物事は言うけど、その実繊細で。

そんな彼女が愛おしかった。

『あ、ここにも花…いっぱいある』

『ほんとだ。なんて花だろ』

『勿忘草、だって』

『勿忘草、好き。可愛い。ジョンイナみたい』

『どこが？』

『１つ１つの花は控えめだけど、それがいっぱいあるの。ジョンイナがくれる愛情、みたいに…って、変なこと言っちゃった』

『変じゃないよ。Aのそういうところが好き』

『そういうところ？』

『繊細に物事を捉えて、それをはっきり言うところ』

『へぇ…そっか…私ってそうなんだね』

『うん。俺は知ってるよ』

彼は、全部、全部。覚えていた。

あの愛しかった日々も…

そこから訪れる、悲劇も。

『忘れないでよ？俺のこと』

『ふふっ、忘れるわけないじゃん！』

ジョンインは、大学生になり、得意だったダンスで半年間留学することになった。

それを伝えた日は、ちょうどAの誕生日だった。

彼はプレゼントによく使う物として、財布を渡した。

Aが、彼に喩えた勿忘草色の財布。

離れていても自分のことを忘れないで、という気持ちも込めて。

冗談混じりに言ったことが…まさか、本当になるなんて、彼は思ってもいなかった。

彼が留学に旅立つ、数日前。

些細なことで、喧嘩した。

喧嘩がエスカレートして、もう口を聞かない、とまで言われたほどだった。

そのまま彼は留学に行ってしまい、モヤモヤした気持ちが残ったまま、離れることになった。

なんであんなこと言っちゃったんだろう、と、自分でも後悔した。

Aと喧嘩したことなんてそれが初めてで、謝り方も分からなかった。

留学中、一切連絡は取らなかった。

モヤモヤしたまま、ぼーっとダンスを学んでいた。

『ジョンイナ、危ない！！』

『え？』

練習をしていたステージの舞台袖から落ちて、重体に。

その時脳震盪を起こして…彼は、それがきっかけで健忘症になった。

そんな状態でダンス留学が続けられるはずがなく、国に帰らなければならなくなった。

地元に帰ると、彼は思い切って彼女に連絡をした。

しかし、返信は無かった。

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