勿忘草は誰が為に (ページ32)

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31.積み上げられた本ページ32

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キュッ

お皿を洗い終わり、水道の蛇口を閉め、手を拭く。

ふと、ジョンインさんは何をしているかな、とベッドの方を見ると…

「…寝てますか…？」

ベッドの上の、横になって目を閉じているジョンインさんにそっと聞くが、返事はない。

近づくと、スースーと寝息が聞こえてきた。

雑にかけられた布団を、しっかり体が覆い被さるように掛け直してあげる。

寝顔は幼くて…かわいい。

思わず口元が綻ぶ。

ずっと見つめていてもいいけど…気になるのは、日記の存在。

…いや、さすがにプライバシーってものがあるし。

中身を見るのは、さすがに人としていかがなものか。

そもそもどこにあるのか分からないし…。

…でも。

『へぇ…私に見せられたりは…？』

『なっ…で、できませんよ！？』

『そんな慌てます？』

『あ、慌てます！恥ずかしいじゃないですか…』

あの慌てっぷり…気になる。

それに。

『Aのこと好きだわ、あの人』

『はぁ…無理するなって…ほら、会いたい人が来てくれたぞ』

ベッキョンの勘と、ギョンスさんのあの発言的に…もしかして、両想いなのでは…というモヤモヤを、晴らしたい…。

うぅ、人としてのモラルを取るか、自分の欲望を取るか…。

とりあえず、ジョンインさんの家に入れるせっかくの機会を無駄にしないために、部屋の中を見てみる。

『あっ、あの！ちょっと散らかってるんで、片付けたくて…少しここで待っててもらっていいですか…？』

10分部屋を片付けていたのだから、きっと見られたくないものはきちんと隠しているだろう、と思いながら、ぐるりと部屋を見回す。

こじんまりとした部屋で、物はそんなに多くない。

ごく普通の一人暮らしの部屋だ。

シングルベッド、1人用のソファ、ローテーブル、小さめのテレビ、クローゼット、棚が２つ。

ん、棚…

そこには、乱雑に重ねられた本。

「あ…ジョンインさんも好きなんだ…」

全て同じ作者のもので、それは私も好んでよく読む本だった。

共通点を見つけられて嬉しい。

ニヤニヤしながら、1番上の本に手を伸ばす。

最近は読めてなかったな…なんて思いながら。

「あっ…！」

バタバタッ！！

急いで片付けたからか、雑に重ねられていた本は、1番上のものを手にしただけで崩れていった。

「あちゃー…」

チラリとジョンインさんの方を見るが、起きていない様子。良かった。

元に戻そうと、床に落ちた本に手を伸ばす…

「ん？」

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