勿忘草は誰が為に (ページ31)

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30.気になる日記ページ31

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「こういうこと、今までにもあったんですか？」

りんごを剥きながら、そう聞いてみる。

「はい、まぁ…僕、よく記憶が無くなるじゃないですか。だからどれくらい働いたのか分からなくて…ついつい、働きすぎちゃうみたいで」

『はい。あんまり疲れないんですよ。記憶無くした後の仕事は毎回新鮮だし、記憶無くなってくれるから働いたって感じしないし』

前にそう言ってたけど…やっぱり、頭は覚えてなくても体はちゃんと疲れてるもんね。仕方がないことなんだろう。

「そうですか…無理、しないでくださいね」

「はい…ありがとうございます」

そんな会話をしていると、りんごを切り終わって、その辺にあったお皿とフォークを使わせてもらって、ジョンインさんの元に戻る。

「はい、どうぞ」

「すみません、気を使わせちゃって…」

「いえいえ！弱ってる時は人に頼るのが一番ですから！」

私にはどんどん頼って欲しい。

「いただきます…」

「はい、どうぞ！」

ジョンインさんがりんごを食べ始めると、シャクシャクという音だけが、部屋に響く…

んーっと…な、何か、喋らないとな…

「こ、今度からは、疲れる前にちゃんと休めるように、働いた時間とか日記に詳しく書いとかないとですね！」

「あぁ…たしかに、そうしなきゃ…」

またこんな風に体調崩したら困るし…いや、私が何回でも看病に来るんですけどね。

…って、そうだ、日記。いい話題を見つけたぞ。

「日記って、いつもどんなこと書くんですか？」

「え？えぇっと…普通に、その日あったこととか、ですね…忘れちゃうと困ることとかを特に」

「へぇ…私に見せられたりは…？」

「なっ…で、できませんよ！？」

「そんな慌てます？」

「あ、慌てます！恥ずかしいじゃないですか…」

慌てるジョンインさん、可愛い。ただでさえ熱で赤くなってる顔を、ますます赤らめている。

…つまり、見られると恥ずかしいようなことを書いている、と…いや、気になるじゃないの！！！

「ふーん…？」

「ちょ…僕病人なんですから優しくしてくださいよ…」

「ははっ、すみません、つい」

少し拗ねたように最後の一口を食べたジョンインさん。

「お皿、洗ってきますね」

「あぁ…何から何まですみません」

「いえいえ！」

私はジョンインさんからお皿を受け取って、流しに向かった。

…さりげなく、日記を隠していそうな場所を、探しながら。

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