勿忘草は誰が為に (ページ29)

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28.看病しますページ29

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ドアの隙間から姿を現したのは、もちろんジョンインさん…なんだけど。

真っ暗なお店から、俯いた顔を覗かせている。

お店に電気が付いていなかったの、男の人に気を取られていたせいか、気づかなかった。

今日は営業してないのかな…。

それより、ジョンインさん、私の方にも気づかず俯いたままだけど、どうしたんだろう。

「…ありがと、ギョンスヒョン、大丈夫だから」

そう言って、手を伸ばして、ギョンス、と呼んだ男の人が持っているビニール袋を掴もうとするも、ギョンス、さんは体の後ろに隠した。

「はぁ…無理するなって…ほら、会いたい人が来てくれたぞ」

「…え…？」

ギョンス、さんの言葉にやっと声を上げたジョンインさんは、私と目が合って驚いた顔をする。

…って、会いたい人…？

「ギョンスヒョン、なんでAの連絡先知ってんの…？」

「いいや、僕はなにも。彼女の方から来てくれたみたいだぞ」

「…そっか…ごめんなさい、こんな姿で」

「いえ…もしかして、体調崩されてるんですか…？」

「…いや、大丈夫です」

「何が大丈夫だよ。こいつ、よく周りに心配かけないように強がるんです。Aさんからも言ってやってくださいよ」

「ヒョン…大丈夫だから…」

そう言うジョンインさんの顔色は明らかに悪く、いつものぽってりとしたセクシーな唇にも色がない。

「大丈夫そうに見えないです！ダメですよ、無理しちゃ…」

「…」

罰が悪そうに俯くジョンインさん。

ギョンスさんの言い方的に、今までもこういうことがあったのだろう。

「じゃあ、これはAさんに任せようかな。ジョンイナをよろしくね」

「え？」

ギョンスさんはそう言って私に、持っていたビニール袋を渡してきた。

中にはスポーツドリンクや果物などが入っていた。

「Aさんに看病してもらいな。嬉しいだろ、ジョンイナ」

「ちょ、ギョンスヒョン何言って…！」

心なしか顔色が少し良くなったようなジョンインさん…え、まさか、やっぱり、ジョンインさんも私のこと…！？

「か、看病、します！ほら、入ってくださいジョンインさん！」

「えぇ、Aさん！？」

私は暗いカフェの中にジョンインさんを押し込むようにする。

「よろしくお願いします、Aさん」

「あ、はい！」

「ひ、ヒョン、待って…！」

ギョンスさんはジョンインさんの言葉も聞かず、軽く頭を下げてから立ち去ってしまった。

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