勿忘草は誰が為に (ページ20)

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19.少しずつズレるページ20

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「あんたからも言っといてよ、”話すことはない、私たちは別れた、それだけだ”、って」

「あっさりしてるね〜」

「いや、ヤツが未練がましいだけよ」

「当たり前だろ、未練がましくもなるよ、長いこと付き合ってたんだから」

ベッキョンはそう言いながらカレーを口に運ぶ。

…そりゃあ、長かった。

けど、そんなものは一瞬で崩れる。

大切なものを失う時は、いつも一瞬なの。

「3年だろ？」

「…は？」

「ん？違う？」

「学生の時からだから、もっとだけど」

「へ？」

「…あんた親友でしょ、そんなんも知らないの」

「…あー…そっか、悪い」

「いや、謝られても」

いつものような明快さが無く歯切れの悪いベッキョンに、なんだかむず痒くなる。

「そっかぁ…時が経つのは早いなぁ〜」

「うるさ」

わざとらしく大きな声で言うベッキョンに、いつものようにイラッとくる。

「そんだけ長く付き合ったんだからさ、もうちょっとちゃんと話して和解すれば、もっと長い付き合いができるんじゃないんですか？」

「他人が口を突っ込まないでいただけます？」

「僕はチャニョルだけじゃなくAのことも想って言ってるんですけどね？」

「余計なお世話なんですけど？」

「いや、この年になるとさ、新しくパートナー見つけるのって大変じゃね？」

…それは、たまに思うことがある。

私は独立するつもりもなく、この会社でずっと働くつもりだ。

そうなると、社内恋愛も何かあった時に怖いし、趣味も特に無いから会社以外のコミュニティ無いし、合コンとか今まで断ってきた分今更お願いしづらいし…。

と、ふと浮かんできた、顔。

「…新しいパートナーを見つければ、しつこいあなたから逃れることができるんですかね」

「いや、そういうわけじゃ…って、まさか候補いんの？」

「…うん、いる」

「え、まじ？」

「うん。チャニョルよりもうんと優しくて、繊細で、かっこいい人」

「嘘だろ、絶対」

「キムジョンインさん。私、彼にアタックするから、邪魔しないでよね」

…..

『○月□日(火) 記憶、リセット

朝、またAと話した。

不安だけど、大丈夫だよな。

Aが、俺を覚えてくれてるから。

今日はAとはそれだけだった。

そういえば、Aは、勿忘草について触れない。

あんなに、好きだったのに。』

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