15.財布が無い ページ16
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私がそう言うと、顔を歪める目の前の彼…チャニョル。
さっき魔法のコーヒーを飲んで忘れられた、元彼。
「俺…別れたつもり、無くて」
「は？」
『別れよう、A。俺ら、たぶん恋人向いてないわ』
「そっちが言ったんじゃない…別れようって…！！」
せっかく、忘れられたはずだったのに。
「いや、あれはついカッとなって言っちゃったことで…」
大きな体をしゅん、と縮こませるチャニョル。そんなのに、騙されないからな。
「別れたいと思ってたからつい出たんじゃないの？」
「違うって…じゃあなんでわざわざこうやってまた会いに来るんだよ」
「さぁ。私には理解できない」
「A…ちゃんと話そう。お願いだからそうやって突き放さないでくれよ」
しばらくそうやって言い合っていたけれど、2人とも意地っ張りで、平行線。
埒があかないと思い、深くため息をついた。
「退いて。明日も仕事だから家入らせて」
私はそう言って、鍵を出そうとカバンの中を探りながら言う。
「じゃあ家の中で話そう？ね？」
「なんでそうなるの…って、あれ…」
鍵を入れているはずの財布が、無い。
ガサゴソとカバンを探ると…
「…え」
カバンの底に、穴があいている。
「…嘘でしょ…」
しゃがんでカバンを地面に置き、必死で財布を探すが…無い。
「…どうしたんだよ」
「…財布、無い」
「え？」
ヤバい、どこで落としたんだろうか…。
最悪だ。
「家、帰れないってこと？」
そう、少しラッキーと思ってそうなこの目の前の男に頼るなんて、絶対に嫌だ。
今からマンションの管理会社に連絡？
時間…かなり遅いし、対応してくれるのだろうか…。
しまった、月曜日の夜から最悪だ。
「俺の家来る？」
「絶対に嫌」
「着替えとか…まだ俺の家にあるけど？」
「全部捨てて」
「じゃあせめてお金だけでも」
「いらない」
絶対に、コイツに借りを作りたくはない。それを口実に、会わなきゃいけないから。
「はぁ…じゃあどうするつもりなんだよ」
まぁ、ダメ元で管理会社に連絡して…なんて、どうにかこの目の前の彼に頼らない方法を考えていた、その時だった。
「あの…A、さん…？」
突然、彼のものじゃない…爽やかな声が、上から降り注いだ。
それは、聞き覚えのあるもので、パッと後ろを振り返る。
「え…ジョンインさん…！？」
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作者名：LUKE | 作成日時：2021年9月7日 9時
