愛の彫刻は消えない【宇髄天元／煉獄杏寿郎】

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ホースオイルレザーの、シングルライダースジャケット。

手入れの行き届いた、状態の良い革の光沢感と、長年かけて馴染んだ革が絶妙な風合いを生んでいた。



誰もいなくなった夜の店内で、2人だけのファッションショーが始まった。



「結構しっかりした造りだから、重いね。」


ジャケットを持ち上げて彼女は興味津々な顔をしていた。


『先に着てみなよ。』

「えー、でもこれはきっと、Aのが似合うよ。
　今着てるトップスにも合いそうだし。
　ちょっと羽織ってみて。」


そう言って彼女は私に向けてジャケットを広げた。


袖を通すと、ホースレザーの上質できめ細かい感触に、心が躍った。


「あー、やっぱいいね。
　めっちゃ似合ってる。」


自分が一目置いている人からの賞賛は、照れ臭くて、むず痒くて、何よりも嬉しい。
試着室の鏡を借りて、自分の姿を確認してみると、我ながらよく似合っていた。



『これ、着心地がすごく良い。
　羽糸も着てみてよ。』


何気ないパスだった。
彼女は、トップスが気に入らないと言って、店内の服を物色し、着ていた服を脱ぎ始めた。


私は目の前の光景に、息を呑んだ。


彼女の背中には和彫の大きな龍が描かれていたから。


「あ…引いた？」


私の視線に気づき、バツが悪そうに苦笑いを浮かべた彼女は、今まで見てきた彼女の中で一番美しくて、魅力的だった。


『ううん、素敵。
　羽糸らしくて、私は好きだよ。』

「ありがとう。
　Aにそう言われると嬉しいなぁ。」


はにかんだ彼女が、ジャケットを羽織ると、自分なんかより何倍も魅力があるように感じた。


『ちょっと…
　めちゃくちゃ似合ってるじゃん！』


もー、嘘つき！と茶化して褒めちぎる。
いつもと変わらないやり取りの筈なのに、少しだけ胸が苦しくなった。






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