ROUND 175 ページ43
テヒョン side
がたがたとAの向こうから音がして
「なんかムカつくんですけど……」
ムスっとしたベッキョンさんの声
慌てて握ったままだったAの指を
ベッキョンさんに見えないようにコートに隠した
パシャ、パシャ、パシャ
いや、何枚撮るの……
ごわついたフードの向こうから聞こえるシャッター音
「……安心した顔しやがって……」
呟いたベッキョンさんの言葉が寂しそうに聞こえた
「羨ましいよ、ほんと……
SMからいなくなって、どうしてるのかの連絡もなくて
みんな心配してたのに
やっと会えたと思ったら……デビューするって……」
焚き火の火を見ながら
ただ、ベッキョンさんの言葉に耳を傾けた
独り言みたいな言葉は
Aだけじゃなく
オレにも向けられてるって分かるから
「Aがどんな練習生だったのか……
オレ達といた事が、少しでも役に立ったのか……
寂しかったんじゃないか
もしかしたら
SMから離れた事は
全然苦にならなかったんじゃないかってー」
ベッキョンさんの言葉の中に
オレの感じた悔しさを感じる
オレ達との日々は
ベッキョンさん達との日々が見えなかったように
ベッキョンさんには見えないから
オレがベッキョンさんに抱いた気持ちは
きっと
ベッキョンさんの中にも同じようにあるんだ
「Aは……」
オレが、こんな話をしていいのかな……
オレがAの気持ちを伝える事は
間違いなんじゃないのかな……
「Aは、今でもSMもexoも大好きです」
きっと
もっとAの気持ちを話せたら良かったのに
オレの口から出た言葉は
たったのそれだけ……
ベッキョンさんに、なんて伝えたらいいのか
オレが話す事を、Aがどう思うのか
そんな自分擁護の邪魔な気持ちが
ベッキョンさんにAの過去や
この前の事を話すことを躊躇わせた
でも
「そっか……嬉しいよ
今でもそう思ってもらえてるなら……
ありがとう、テヒョナ」
やっと見えたベッキョンさんの顔は笑顔で
たったのその一言が
ベッキョンさんにとって
本当に嬉しいんだって思った
「でも
やっぱムカつくから、交代な(笑)」
肩の重みがなくなって
ベッキョンさんの肩に頭を乗せたA
ふんわりと腕を回したベッキョンさんの手が
Aのフードを優しく撫でて
オレの手からAの指がするりと離れた
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作者名：LINK | 作成日時：2017年11月24日 22時
