ROUND 154 ページ22
「あの日
Aとテヒョナのスケジュールは押さえてあったんだー」
SMに行く事を知らなかったのは
私達2人だけで
どちらの事務所側にも、事前に話が通っていて
サプライズ的なテレビ局側の企画にのったのか
私やテヒョンが嫌がるのを想定してか
私達には知らせがなかった
「違う形でも
あの場所にAが立てるなら
ただ、そう思った」
うつ向いたままのベク
「そんなの……ずるいよ……」
あの場所がどんなに羨ましかったか
あの場所をどんなに憧れたか……
あの部屋には、今の私だって到底入れない
実力の無い私が、権力であの場所に入るのは
図々しい話
それに
私はそんなの望んでない
あの頃
先にデビューが決まったみんながきらきらして見えて
その“場所”じゃなくて
みんなにもっと近づきたかった
あの部屋に入れたら……
きっと、それが近づくはずだって思ってた
でも
それは私がSMにいたから
今の私には、あの部屋は
単なる練習室
今もきっと、あの部屋を使う誰かがいてー
憧れている練習生がいて……
それは私じゃない
夢だった筈の場所は
今じゃもう、目指すその意味を持たない
「あの場所は、私には……辛いだけ……」
小さくついた溜め息と一緒に
喉につっかえた気持ちも吐き出した
寂しくて苦しくてー
胸の奥に押し込んでたはずの
隠したはずの気持ちが
乗り切れてたと思ってた傷が
胸の奥をぐちゃぐちゃにさせる
「SMに戻った時に、なんとなく実感した……
Aはもう、オレ達とは違うんだって」
「え……？」
ベクの言葉が胸の奥を突き刺すように痛ませる
「Aを苦しめる思い出なら
もう、そんな記憶なんかいらない」
ベクと目が合えば
口を固く結んで
真っ直ぐな瞳
その言葉の意味を頭で理解する前にー
「だから、もう……忘れた方がいい」
ベクの言葉が合図みたいに
今にも涙が出そうになる
ぐっと噛み締めるように口を詰むんだけど
苦しいって気持ちが口を開かせた
「……全部、無かった事に……」
「え？」
「ベクは……全部、無かった事に出来るの？
私はいなかった事に……？」
「違う……」
「全部……忘れちゃうの？」
投げ掛けた言葉の
ベクの返事が怖くてー
耐えきれなくて
その場から逃げるように飛び出した
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作者名：LINK | 作成日時：2017年11月24日 22時
