ROUND 146 ページ14
テヒョン side
「あの部屋……
デビュー部屋って言ってさ
SMの練習生はみんな憧れて、目指す練習室なんだよ」
そうベッキョンさんが話し出せば
天井を見上げたベッキョンさんは
昔を思い出すように柔らかく笑った
「Aは1度だけ
オレ達とあの部屋に行ったんだ
きっといつかってバカみたいに励まして……
ほぼ確定してたはずのAのデビューは
いつの間にか白紙になってて
オレ達がデビューする前に
Aとの契約は更新されなかった」
あぁ、そうだった……
Aと会った時
オレ達もベッキョンさん達も
まだデビューしてなかったっけ
「分かって……欲しかったんだ……
Aがあの部屋を目指してた事
Aが今、お前のとこでデビューしたって事
それに……Aにも
形は違うけど、あの部屋で練習して欲しかった……」
ベッキョンさんの目は
いつの間にかオレに向けられていて
その目は、苦しそうで
辛そうに見えた
「なんてさ……
そんなの、オレのエゴだったんだよなっ
バカだよな、ほんと……
ごめん、こんなことになると思わなかったんだ
ほんと、ごめん」
謝ってくれたベッキョンさんに
首を振れば
「Aにも、悪いことしちゃったなぁ……」
Aは
何年間、あの場所を目指して練習してたんだろう……
どんな風に通ってたんだろう……
無かった事になった、その何年を
今、どう思ってんだろう……
そう思えば
胸の奥がぎゅっと鈍く痛んだ
Aと、そんな話
今までしたこと無かった……
BIGHITに入って
Aはどんな風に
その思いを消して来たんだろう……
「事務所、戻るわ……」
深く息を吐き出して
「またな、」
そう笑ったベッキョンさんが診察室を出ていった
オレには、ベッキョンさんの気持ちも
想いも
きっとAの気持ち一つ
理解できないんだ
“分かります”なんて
そんな言葉すら
何も知らないオレには
言えるような話じゃないんだ
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作者名：LINK | 作成日時：2017年11月24日 22時
