ROUND 143 ページ11
久しぶりに見る事務所内
通いなれたあの日から
変わった所が目についた
でも
全てが変わった訳じゃない
変わらない
あの日のままの場所を無意識に探して
心の奥底では懐かしんで
心の何処かでは寂しくて
すれ違う人と顔をあわせられずに
深く被ったフードとマスクだけが
唯一の防御だった
「ここ」
扉を開けたベクの声に顔を上げれば
練習室に入ったベクの後を追って
先に入ったテヒョンの背中越しに見えた光景に
自然と足が止まった
「……っ」
「A？」
振り返ったテヒョンの声が遠退いた
“ここが例のデビュー部屋？”
“そ、もうすぐ俺達が使う練習室”
“うわぁ、いいなぁ”
「大丈夫？」
“Aもいつかここにくるんだよ”
“いつの話だろ……”
“俺達の次はきっとヨジャだよ”
“Aもその候補の一人だろっ”
“大丈夫、Aならデビュー出来るよ”
みんなとの会話が頭を駆け巡った
強く握ってたはずの手が
痺れたみたいに感覚を無くして
“一緒の音楽番組出てさー”
“そしたらSMTも一緒だなー”
“一緒に日本に行こうー”
頭からひんやりとするような感覚と
力が抜けた体が震えてー
忘れてたはずの記憶が
頭を廻る
「ほらっ」
練習室の中から伸びたベクの手が
私の腕を掴んで中に一歩踏み入れると同時に
ぐらりと目の前が歪んだ
「Aっ！あぶな……」
テヒョンの声が遮断されて
一瞬で消えた全ての音
鏡に映る自分がー
目の前の景色がゆっくりと斜めに傾いて
そのままぷつりと私の意識は途切れた
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作者名：LINK | 作成日時：2017年11月24日 22時
