の ページ3
─
「A」
『……またお前か』
「俺以外に来る奴とか殆ど居ないでしょ」
『誰にも言わなかったのに勝手に探り当ててきたのはお前くらいだ』
目を反らし、膝の上に乗せていた板にパチ、とピースをはめた。
「何そのパズル。ピース多くない？」
『良い暇つぶしになるから持ってきた。
3000ピースくらいある』
「めちゃめちゃあるじゃん」
『めちゃめちゃある。まだ半分も出来てない……』
疲れきったように息を吐き目を閉じる。
若葉の隙間を通り抜けてきた風が黒髪を揺らし、正反対な真白な額を覗かせた。
彼女にそんな無防備な姿をさらされて何もしないほどヘタレでも我慢強くもなく。
その額にそっとキスを落とす。
長い睫毛が縁取る青い目が勢いよく開かれた。
『……何すんだ』
「俺の前で目閉じるとかキス待ってるようなもんじゃん」
『地頭良いくせにお前の脳は色ボケ大特価バーゲンセール中か』
飴とムチの差がスゴい。
飴1とするとムチ6くらいあったよ今
強すぎるムチを打たれた後は特に何も言われなかったので横に寄り添う。
『ん…………』
華奢な手が中途半端な風景の上でさまよう。
あ、分かった。
手を重ねて動かし、パチ、と当てはめる。
『手を握るな』
冷たくあしらわれたのでもう怒りに触れないよう手を引いた。
『……………………あんがと』
ごく小さく耳に届いたその四文字に、人知れずにやりと頬を緩めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：camellia | 作成日時：2019年7月20日 13時
