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それから、侑司くんの願望は叶って。
私は侑司くんの脚の間に挟まれて髪をとかされているという謎の状況。
───────ぜったいとかしにくいやろ。ていうかわざわざとかす必要ある?
「う、かわええなぁ」
「何もしてない……」
「存在が」
お酒が入ってるのかもしれないけど、やたらゆるゆるしてる。
口調も緩いしやっぱり飲んできたのかなぁ、最近家で2人でビール飲んだりしてない。私が弱いから心配かけちゃうんだよね、
「かわいい」
そう言って私の首筋を撫でる。……だめだ、こういうことな。
お酒入ってるフリして抱こうとでもしているんだろうか、これも、口実作り?
そうっと輪郭の縁に沿うようにその優しくて温かい指先を触れる。こそばゆい。
後ろからの吐息と揺れる髪の毛が耳にかかって身体がびくびくしてしまう、だめだ、そういう気分になってしまうじゃないか。さらさらの髪はいい匂いがする。やっぱりお酒なんか入ってない、紛れもない侑司くんの香りだ。
「好き」
そっと口付けをする。
「わたし、も」
「しよか」
「ここで?」
「どこでも」
どこでも、なんて馬鹿みたい。こんな明るいリビングでする、なんて有り得ない────
でも侑司くんはそんなことおかまいなしに私の身体に手を這わせる。
求めていた体温だった。知らないうちに侑司くんを求めてるのかぁなんて思うとなんか気恥ずかしくて、もう一方の手を握ると侑司くんは私の弱いところをゆっくり暴きはじめる。
知ってるくせに。ぜんぶ、
「もっと、してよ」
「やだ」
「いや、ぁ、……もっ、と」
焦らすのも上手いんだ。淡々と指を動かして、ときどき愛の言葉を囁いて、
ぎゅっと繋いだ手を握り返すから、温かい手が触れるから、
私はまた侑司くんのことが好きになってしまう。
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ちゃみ - お話惹き込まれて一気読みしてしまいました…!ドストライクで凄く好きです。素敵なお話をありがとうございます。いつかまた更新されることを願っています! (2021年5月6日 0時) (レス) id: d0e9746bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁 x他1人 | 作成日時:2019年7月24日 22時