ゆらり夏の日 (ページ30)

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「ごめんごめん、そんなつもりなかったんやけどなぁ」

また笑う。まぁ、金子侑司らしいと言ったところか。女を抱くのにも慣れてるんだろうしどこをどうしたら気持ちいいだとか、全部知っているんだろうなぁ。また悲しくなる、もうこうやって一人で考えて悩むのはやめようと思ってるのに。金子侑司のことになると自分があまりにも女らしすぎて嫌になってくる。

「どうやった？」

「え？」

「気持ちよかった？」

「それ普通聞く？」

あまりに突拍子もない質問だったからすぐに答えられる訳もなくて、敬語を使おうという脳の働きが失われるくらいにして。変な質問だった。こいつは女を抱く度にいちいちこんなくだらないことを聞いて回っているんだろうか。

「なんで」

「いや、ただこんなに気持ちよかったのが久々だっただけ」

「え？」

「頭、おかしなるかと思った」

相変わらず爽やかに微笑んでいて、
それが私を喜ばせる為の嘘なのかどうかは検討もつかない。

「必死な顔見せてた？恥ずかしいなあ」

「私も、十分必死やったから」

「やと思った」

「お互い様やで」

今くらいなら関西弁でもいいかなって、自然体でいられるかなって。
やっぱり侑司くんは嘘をついてない、と思う。侑司くんのあそこまで必死な顔って初めて見たし、あの声だって、愛してるの言葉だって、嘘じゃない。信じてみよう。

「侑司くん」

「ん？」

「愛してる」

「珍しいデレや」

「ちょっと」

馬鹿にしないでよね。少しくらい、愛を伝える日があったっていいでしょ。
それが、私たちの特別な日なんだから。

「俺も愛してる」

「当たり前やん」

懐かしい響き、少しだけまた前に進めた気がした。