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あるはずだったしあわせを、噛み締める。
込み上げてくる声を我慢しようとしたら力が入って、侑司くんの背中にわたしの爪がくい込むのがわかる。ごめん、なんて言える余裕はとてもじゃないけれどなかったし、侑司くんの必死な顔が少し緩んで微笑んだような気がしたからなにも口にしないでおいた。
ふたりの息がかさなる。
まるでなにかの音楽のようにメロディーが紡がれていく。
こんなに気持ちいいことって、あるんだっけ?
侑司くんとじゃないとありえないし、他の男の人とこんなにきもちよくなることなんてできない。綺麗な唇から漏れる吐息も、声も、なにもかもすきだった。
───────ほんとはずっとずっと、すきなんだ。
侑司くんのなにもかもがほしくて、でもそんな気持ちに耐えられなくて、
他の女がいるなんて言い訳を作ってしまって。
「……Aっ、」
侑司くんがわたしを呼んだ。
やさしくて、あつくて、とろけそうだ。
我慢の限界を迎える。
「ぁ、侑司くん……もう、むり────」
すきだよ、と優しく耳打ちされて、
深く抱きしめられる。
そしてまた、ひとつになる。
ゆっくりと、侑司くんから溢れる愛を受け止める。
「なんで、泣いとんねん」
「うれしくて……」
「かわええな」
涙が零れていたようだ。
侑司くんは笑っていたけど、その目には汗じゃないなにかが光っていた。侑司くん自身も少し恥ずかしいのか何も言わなかったから、私も何も言わないでおいた。今は、この空間だけでいい。私たちを隔てるものなんて、無い。
──────やっとわたしたち、報われたんだね。
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ちゃみ - お話惹き込まれて一気読みしてしまいました…!ドストライクで凄く好きです。素敵なお話をありがとうございます。いつかまた更新されることを願っています! (2021年5月6日 0時) (レス) id: d0e9746bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁 x他1人 | 作成日時:2019年7月24日 22時