検索窓
今日:8 hit、昨日:3 hit、合計:114,224 hit

28頁目 ページ28

あるはずだったしあわせを、噛み締める。
込み上げてくる声を我慢しようとしたら力が入って、侑司くんの背中にわたしの爪がくい込むのがわかる。ごめん、なんて言える余裕はとてもじゃないけれどなかったし、侑司くんの必死な顔が少し緩んで微笑んだような気がしたからなにも口にしないでおいた。


ふたりの息がかさなる。
まるでなにかの音楽のようにメロディーが紡がれていく。

こんなに気持ちいいことって、あるんだっけ?
侑司くんとじゃないとありえないし、他の男の人とこんなにきもちよくなることなんてできない。綺麗な唇から漏れる吐息も、声も、なにもかもすきだった。




───────ほんとはずっとずっと、すきなんだ。


侑司くんのなにもかもがほしくて、でもそんな気持ちに耐えられなくて、
他の女がいるなんて言い訳を作ってしまって。





「……Aっ、」



侑司くんがわたしを呼んだ。
やさしくて、あつくて、とろけそうだ。

我慢の限界を迎える。



「ぁ、侑司くん……もう、むり────」



すきだよ、と優しく耳打ちされて、
深く抱きしめられる。



そしてまた、ひとつになる。
ゆっくりと、侑司くんから溢れる愛を受け止める。



「なんで、泣いとんねん」


「うれしくて……」


「かわええな」



涙が零れていたようだ。
侑司くんは笑っていたけど、その目には汗じゃないなにかが光っていた。侑司くん自身も少し恥ずかしいのか何も言わなかったから、私も何も言わないでおいた。今は、この空間だけでいい。私たちを隔てるものなんて、無い。






──────やっとわたしたち、報われたんだね。

29頁目→←27頁目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (133 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
355人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ちゃみ - お話惹き込まれて一気読みしてしまいました…!ドストライクで凄く好きです。素敵なお話をありがとうございます。いつかまた更新されることを願っています! (2021年5月6日 0時) (レス) id: d0e9746bc6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: x他1人 | 作成日時:2019年7月24日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。