掴めなかった手 ページ5
ci side＿＿＿＿
ルミエール国の中で一番といっていいほど力を持つ王族エレノア家。
現国王に一番近い存在であるこのエレノア家に潜入任務にきていた僕、チーノです。
戦争で勝って建国された国、
我々国の幹部として働く僕は主に潜入任務などを主とする第3部隊に属している。
時期に我々国にとって良き存在になるであろうルミエール国と
これからより良い関係を築くために潜入任務を遂行しています。
そんな僕はエレノア家の新しい護衛として雇われた。
エレノア家は4人家族ではたから見たら仲睦まじい名誉ある王家に見えるであろう。
しかし実際はそんなことなく、両親は時期国王候補であるお兄様に首ったけで
妹のA様には一切目もくれなかった。
だが、兄弟の仲はとてもよかったように見える。
矢先、お兄様が隣国の王族や貴族が集まるパーティに出席しているときに
急に倒れて亡くなってしまった。
原因は不明だか、心筋梗塞という心臓に酸素が回らなくなり壊死してしまう病
だったと聞かされている。
しかしお兄様は健康そのもので病気なんて全くしておらず、
少なくとも僕がここにきてからは病に倒れるような人には見えなかった。
お兄様がなくなってからというもの、エレノア家に対する風当たりは強く
次の国王候補であるはずのA様への扱いはさらにひどいものとなり
次第に衰弱していくA様を見ていられなかった。
そんなある夜、Aさんが屋敷のバルコニーに座っているのを見つけ
なにか嫌な予感がした僕は護衛として彼女を止めにいった。
「A様、危ないですよ。降りましょう。」
エレノア「あら、チーノさん。ごきげんよう」
「こんばんは･･･。」
顔はこっちに向けず、返事だけするA様。
「僕がA様の力になります。だからまずはそこから降りて僕と話しましょう。」
なんでそんなこと言ったかわからない。
ただ前にいる美しい女性が儚くて、今にも消えそうなことくらいは自分にもわかった。
エレノア「あなたは不思議な人ですね。なんだか頼りたくなってしまうような、不思議な気持ちになりました。」
こっちを向いて僕の目をとらえてふふっと笑った彼女は本当に美しかった。
手を伸ばそうとしたその時、
大きな風が吹いてバルコニーの縁に座っていたAさんは
バランスを崩して下に落ちた。
僕の伸ばした手は空を切り、何も掴むことはなかった。
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チーノ(23)
第3部隊所属
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作者名：Loulou | 作成日時：2022年9月22日 21時
