【wrwrd!】恋愛依存症彼女 (ページ2)

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恐怖心と好奇心【tn】ページ2

突然だが俺には恋愛経験が殆どない。
…何故“殆ど”とするかと言うと、まあ学生時代のは恋人がいた事もある、というだけだ。

潜在的な異性への恐怖と、自分が誰かのものになるという窮屈さ等、原因となり得るものは幾つかあるが、最も大きいのはそう、幼馴染の存在だ。

明るいが奥ゆかさもあり、容姿端麗、頭脳明晰。
少しドジで運動は得意とは言えないが、寧ろそれは彼女を理想の女性と形容するためのスパイスとも言える。
完璧だ。完璧過ぎるのだ。
故に俺には手が届かない存在であり、ただの幼馴染で、友人である、それが昔からの線引きのようなものだった。

勿論彼女はモテていたが、“頼めばなんでもしてくれる”、等と下品な噂も立っていた。
無論、そいつ等は俺が絞めたし、本人にもそんなことは無いという確証を得た。

そんな幼馴染との関係は、社会人になってもずるずると続いている。
お互い会社の愚痴を言い合ったり、俺達の活動の話を少しだけしたり。
そして彼女の恋愛の愚痴を聞いて、俺はついに気付いてしまった。
十数年自分が蓋をしてきた感情、嫉妬心に。

自分は余り執着心のある方では無いと思っていた。(突然子供のようになるグルさんや、コネ始めるシッマとか、そういう人しか持たないと思っていたのだ)
然し、気付いてしまった感情は、一度溢れると止まることを知らない。
今の恋人が淡白だ、と落ち込む彼女を見て、つい俺は本音を零してしまった。

「俺にしとけばええのにな」

相手の顔を見て、しまった、と口に手をあてたがもう遅い。
やってしまった。完全にやらかした。
折角隠してきたのに、もう隣にいられない。
弁解の余地等無いが、慌てて口を開こうとするも彼女の声に遮られる。

「トンちゃんなら、私の事ずっと見ていてくれる？」

時が止まるよう、とはこの事だと思った。
十数年隣で俺を呼んでいたあどけない唇は、艶めかしく光る。
酒のせいで蕩けた瞳と薄らと紅く染まる頬は、俺の思考を奪うには充分すぎた。
嗚呼、幸か不幸か今日は宅飲みだ。
なけなしの理性はとうに飛んでいってしまったようだ。
巫山戯て抓る位でしか触れたことの無い頬に手を伸ばしするりと撫でる。
まるで禁断の果実だ。
ただの林檎だったそれは、今俺の手の中で妖しく光る。

そっと口付けを交わした。
きっと俺は、楽園から追放される、なんて下らない考えを最後に、俺は考える事をやめた。