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少しだけ待ってもらって、部屋の中をちょっと片付けてから篤人を呼んだ。
適当に座るようにうながして、コーヒーメーカーをセットした。
コーヒーが落ちる間に着替えてリビングへ戻ると、篤人は私の音楽プレイヤーをスピーカーに繋いでいた。
そして仕事の資料が積まれた机や、本棚を眺めてからソファーに腰を下ろした。
スピーカーからは、サラ･ヴォーンの歌が流れ始めた。
｢これ、何ていう人？｣
バッハのメヌエットを元にしたと言われているその曲は、私のお気に入りだが、夜の雰囲気ではなかった。
これは、日の光がよく似合う。
名前を教えると、iPhoneで検索したのか、
｢俺と同じ誕生日｣と、つぶやいた。
3月27日。
カルテで見て、記憶している日付を思い出す。
自分より、4年も後のそれを思い出す。
マグカップを持っていき、私もソファーに座る。
でも、私と彼の間には不自然な空間。
私のためらいの分の、ポカッとあいた空間。
年末に日本へ帰る話になり、私がドイツに残ると言うと、
｢ふーん｣とだけ言って、
後は自分のウィンターブレイクの予定を話し出す。
チャリティマッチに出たり、実家へ帰って母校の初蹴りに参加したり、テレビに出たり、雑誌の取材があったり、忙しそうだ。
そして。
｢向こうで、こっそりAと会えると思ったのに｣と、言った顔は子供のようだった。
でも、そんなの無理に決まってる。
こっそり、と言うあたりが、彼自身がその難しさを知っている事を示している。
マスコミとか、私とは違う世界で彼は生きている。
雨が強くなってきて、サラの歌声も消される。
なんで帰らないの？ と、聞かれ、理由を説明させられる。
2月の初めに、この2年間の研修成果を発表する機会がある事。
そのレポートをまとめなければならない事。
それが思った以上に遅れている事。
年末年始は普段よりまとまった時間が取れそうなので、それに集中したい事。
｢サッカー選手程ではないけれど、私も色々大変なの｣
彼はまた、｢ふーん｣と言って、ま、あんまり無理すんなと、私の頭をポンポンと撫でると、｢またね｣と、帰って行った。
あとには、私とサラと、彼の手の感触だけが残った。
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馨子(プロフ) - さゆさん» さゆ様、初めまして。ｺﾒﾝﾄありがとうございます。こちらのお話は、半年近く前に一応完結しているのですが、私もたまに、あのふたり、今頃どうしているかなと考えたりします。楽しんで頂けたようで良かったです。今後も宜しくお願い致します。 (2014年5月1日 15時) (
レス) id: f72e0ba777 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - すごく面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。キュンキュンきて、もう終わっちゃったーと残念です。続きが読みたくてたまらないです(笑) (2014年5月1日 14時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - ManAさん» ManA様、いつもありがとうございます。楽しんで頂けて良かったです。嬉しいです。新作も頑張ります！ (2013年12月3日 2時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
ManA(プロフ) - 最後まですごく楽しく読ませていただきました！本当にｷｭﾝｷｭﾝでした笑笑また新しく更新されるの楽しみにしてます☆ (2013年12月3日 0時) (レス) id: 669658a306 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - りくさん» りく様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。最後までお読み頂いた事、感謝致します。今日の試合はご覧になりました？篤人さんが出なかったので少々消化不良気味ですが、勝ったので良しと致しましょう。新作、頑張ります。またのお越しをお待ち致しております。 (2013年11月20日 14時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年10月17日 17時
