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篤人は、私の髪を撫でると、前に回り込んで来た。
「なんで、えっ？なに？なんで泣いてんの？」
「…んでもない」
「なんでもないって…。どうした？ あ、具合でも悪い？ 腹でも痛いの？」
「違っ…、もういいの、解ったの」
「はぁ？ なんなの？」
「ごめんね、篤人。めんどくさいよね？ もういいから、もう私の事なんていいから」
「だから、なんなの？」
「…ごめっ…、離して。もう帰る」
「おまっ、なに言ってんの？ 帰るって、今何時だと思って、って、あああああっ！！」
「な、なに…？」
「ちょっと！ あー！ ここにいて！」
え？
篤人は玄関へ向かって猛ダッシュ。
一体どうしたの？
次の瞬間、リビングに戻って来た篤人を見て、私は更に泣く事になる。
「あっぶねー、まだギリギリ今日だよな？」
篤人の手には真っ赤な薔薇の束が抱えられていた。
「誕生日、おめでとう」
「…な、んで？」
「驚かそうと思って玄関に置いてたの忘れてた」
「そうじゃなくてっ！」
「あ、あれだ、絢子さんがAを裏切ったって事」
なんなの？ なんなのよ。
「あ、篤人は、私の事、好きなの？」
「は？ バカじゃないの？」
「え？ 私、バカなの？」
篤人が笑い出すから、つられて私も笑ってしまった。
篤人の家には花瓶がなかったので、この薔薇の塊を水に差すにはカレーを作る時に使う鍋しかなかった。
「鍋って、どうなの？」
「だってこれしかなかったんだもん」
テーブルに置いた鍋を見ながら、ソファーで一緒に毛布にくるまる。私はその上、篤人にもくるまってる。
「まさか、29本？」
「いや、それはデリケートな問題らしいから、店にあったやつ全部買って来た」
「大人買いだ」
「そ、大人買い」
目が合うと、篤人の唇が近付いて来て、私の唇と重なる。
何度も何度も重なる。
「今日、篤人帰って来てから私に触るの、今初めてなんだけど？」
篤人はニヤッと笑うと、
「あー、それでAは訳の解んないことを考えちゃったのか」
「だって」
「…触っちゃったら、そのまま押し倒しそうだから我慢してたの！」
・・・なによ、それ。
「よし、じゃベッド行こ？」
「え？」
「え？じゃないでしょうが！ 今からするよ、ほら立って」
「あ、じゃあ、これも持ってく」
「鍋…」
「リビング、暖房で暖かくて花が痛んじゃうから」
「なんでもいいから早くして！」
篤人が鍋を抱えて、もう片方の手は私の手を引いて寝室へ向かう。
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馨子(プロフ) - さゆさん» さゆ様、初めまして。ｺﾒﾝﾄありがとうございます。こちらのお話は、半年近く前に一応完結しているのですが、私もたまに、あのふたり、今頃どうしているかなと考えたりします。楽しんで頂けたようで良かったです。今後も宜しくお願い致します。 (2014年5月1日 15時) (
レス) id: f72e0ba777 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - すごく面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。キュンキュンきて、もう終わっちゃったーと残念です。続きが読みたくてたまらないです(笑) (2014年5月1日 14時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - ManAさん» ManA様、いつもありがとうございます。楽しんで頂けて良かったです。嬉しいです。新作も頑張ります！ (2013年12月3日 2時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
ManA(プロフ) - 最後まですごく楽しく読ませていただきました！本当にｷｭﾝｷｭﾝでした笑笑また新しく更新されるの楽しみにしてます☆ (2013年12月3日 0時) (レス) id: 669658a306 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - りくさん» りく様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。最後までお読み頂いた事、感謝致します。今日の試合はご覧になりました？篤人さんが出なかったので少々消化不良気味ですが、勝ったので良しと致しましょう。新作、頑張ります。またのお越しをお待ち致しております。 (2013年11月20日 14時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年10月17日 17時
