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3月9日がやって来て、私は29歳になった。
4つも5つも、年上だということに変わりはないけれど、思った以上に29という数字は、私を、私の気持ちを滅入らせる。
昔は、早く大人になりたかったのに。
昼前に篤人の家に着くと、絢子さんは既に料理を始めていた。
「Aちゃん、お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
「20代最後、良い年にしてね」
「はい、頑張ります」
見ると、テーブルの上に、ふたりで食べるのにはちょうど良いサイズのケーキが置かれていた。
「私からのプレゼント」
「…絢子さん、こんな、…嬉しいけど、篤人にバレちゃう」
「大丈夫よ。 試合に復帰したお祝いって事にしとけば？」
「…今日、出られるのかな…」
「なんか、大丈夫そうな事言ってたけど」
そして、数時間後、私は衝撃を受ける事になる。
篤人は、サッカーをしている篤人は、最高にかっこよくて、躍動していて、美しかった。
そんな世界がある事を私は知らなかった。
篤人がこんな世界で戦っている事を知らなかった。
それは、絢子さんと料理をしながら観られるようなものではなかった。
絢子さんは、時々リビングに顔を出して、解説みたいに色々教えてくれながら、一緒に観ていたけれど、気をきかせてくれたのか、途中からは席を外してキッチンに入ってしまった。
私はテレビの前から動けなくなり、無言になり、いつしか、そこは私と篤人だけの空間になっていた。
駆ける篤人が、自分よりも随分大きな相手と競り合う篤人が、ボールを蹴り上げる篤人が、ボールを投げ入れる篤人が、全てが私の知らない篤人だった。
絢子さんが帰った後も、私はしばらく放心状態で、篤人が帰って来た時もまだぼうっとしていた。
篤人は、先発でフル出場で2アシスト、だって。
多分それってすごい事なのよね？
「篤人、ごめん。私、ほんとにサッカー解らなくて」
篤人はニコニコしている。
「スローインが、ゆっくりのスローじゃないってのも最近知ったの」
篤人大爆笑。
「脚は大丈夫？」
「全然。 あー、腹減った。めしにしてくれー」
「筑前煮、今日は美味しく出来たよ」
「どれどれ。あ、なんでケーキがあるの？」
「あ、絢子さんが！ 復帰のお祝いにって」
焦る。でも、篤人はふーんだって。
バレてない？
「あー、それにしてもかっこよかった、篤人。かっこよくて、すごく綺麗だった」
「惚れ直した？」
「え？ あ、…うん」
「なに、俺ら、バカップル？」
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馨子(プロフ) - さゆさん» さゆ様、初めまして。ｺﾒﾝﾄありがとうございます。こちらのお話は、半年近く前に一応完結しているのですが、私もたまに、あのふたり、今頃どうしているかなと考えたりします。楽しんで頂けたようで良かったです。今後も宜しくお願い致します。 (2014年5月1日 15時) (
レス) id: f72e0ba777 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - すごく面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。キュンキュンきて、もう終わっちゃったーと残念です。続きが読みたくてたまらないです(笑) (2014年5月1日 14時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - ManAさん» ManA様、いつもありがとうございます。楽しんで頂けて良かったです。嬉しいです。新作も頑張ります！ (2013年12月3日 2時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
ManA(プロフ) - 最後まですごく楽しく読ませていただきました！本当にｷｭﾝｷｭﾝでした笑笑また新しく更新されるの楽しみにしてます☆ (2013年12月3日 0時) (レス) id: 669658a306 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - りくさん» りく様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。最後までお読み頂いた事、感謝致します。今日の試合はご覧になりました？篤人さんが出なかったので少々消化不良気味ですが、勝ったので良しと致しましょう。新作、頑張ります。またのお越しをお待ち致しております。 (2013年11月20日 14時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年10月17日 17時
