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私が、生まれて初めて作ったバレンタインのケーキを、篤人は2日で全部食べてしまったらしい。
22㎝の型で焼いたホールのガトーショコラを、ひとりで、しかも2日でって、嬉しいような、心配なような。
でも、絢子さん曰く、すごく嬉しそうだった、らしい。
とりあえず良かった。
更に絢子さんは、その日がバレンタインだということも忘れてたみたい、と告げた。
「まさか！ いくら篤人でもそれはないと思うけど。沢山もらってそう」
「ううん、あの日、1日リハビリセンターだったみたいだから、出待ちの子もいなかったのよ、きっと。少なくとも、家にチョコは持って帰ってないわよ」
だから、大丈夫よと、私にライバルが出現していないと笑った。
ここにも、私の為に馬に蹴られそうな人がいる。
今日も、そんな優しい絢子さんが用意してくれたお昼ごはんを食べながら、話題は当然、篤人の事。
「ほんとに全然会ってないの？」
「ほんとに全然、です」
会ってないどころか、連絡も取っていない。
「篤人君は自分で決めた事だからいいとして、Aちゃんは？ さみしくない？」
「うーん、まあ。でも、あの人、とことんやらないと気が済まないタイプみたいなので」
「あ〜、そうね、やるからには徹底的って感じよね？」
「子供っていうか、頑固っていうか」
最近、絢子さんに教えてもらいながら、少しずつ料理を覚えてる。
篤人がリハビリ頑張ってるから、私も何か頑張りたいという気持ちと、さみしさを紛らす為に、何かに集中したい気持ちと。
料理は不思議だ。
集中していると、頭の中をリセット出来る。
無心になって、みじん切りをしている自分がいたりして、なんだか可笑しい。
「沢山埋め合わせしてもらうといいわよ」
「そうですね、なんか高い物でも買ってもらおうかな」
「そういえば、来月、篤人君の誕生日ね？ プレゼントとか、考えてる？」
「いえ、まだ…」
サラ・ヴォーンと誕生日が同じだと言った篤人を思い出す。でも、あの時、私は彼に何も言わず、聞こえない振りをしたのだ。
Aはいつなの？ って、聞かれるのが嫌だったから。
「Aちゃんの誕生日はいつなの？」
「私も来月なんです、9日」
「あら！ あらあら」
「？」
「この間、たまたま見つけたの。 ほら、やっぱり。9日に印が付けてあるじゃない」
壁に掛けられたカレンダーを、絢子さんが1枚捲ると、3月9日に丸印が付けてあった。
そんなはずない。
篤人が知っている訳がない。
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馨子(プロフ) - さゆさん» さゆ様、初めまして。ｺﾒﾝﾄありがとうございます。こちらのお話は、半年近く前に一応完結しているのですが、私もたまに、あのふたり、今頃どうしているかなと考えたりします。楽しんで頂けたようで良かったです。今後も宜しくお願い致します。 (2014年5月1日 15時) (
レス) id: f72e0ba777 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - すごく面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。キュンキュンきて、もう終わっちゃったーと残念です。続きが読みたくてたまらないです(笑) (2014年5月1日 14時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - ManAさん» ManA様、いつもありがとうございます。楽しんで頂けて良かったです。嬉しいです。新作も頑張ります！ (2013年12月3日 2時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
ManA(プロフ) - 最後まですごく楽しく読ませていただきました！本当にｷｭﾝｷｭﾝでした笑笑また新しく更新されるの楽しみにしてます☆ (2013年12月3日 0時) (レス) id: 669658a306 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - りくさん» りく様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。最後までお読み頂いた事、感謝致します。今日の試合はご覧になりました？篤人さんが出なかったので少々消化不良気味ですが、勝ったので良しと致しましょう。新作、頑張ります。またのお越しをお待ち致しております。 (2013年11月20日 14時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年10月17日 17時
