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その日、家に帰ると、絢子さんがまだいた。
「ただいま」
「おかえりー」
ん？ 家の中に甘い匂いが漂っている。
これは・・・。あれじゃん？
今日は2月14日だった。
「匂いでバレバレね？」
「…チョコ？」
「そう。 Aちゃんが一生懸命作ったのよ」
マジかっ？ やべっ、顔が緩む。
「実はね、ほら、篤人君にお願いされてた事なんだけど、Aちゃんに食事を届けるんじゃなくて、時々Aちゃんが昼間ここへごはんを食べに来てるの、そうね、主に夜勤明けに」
「夜勤？」
「なんか、大変だった仕事が終わったから、外されていた夜勤が復活したんですって」
「…え？ あの人、歩いて通勤なのに、夜とかって危なくないの？」
絢子さんが笑い出す。
「ほんと、Aちゃんの言った通りね」
「え？」
「絶対篤人君はそこに食いつくって」
だって、夜にひとりで外歩くなんて。
「夜はタクシー、病院が手配してくれてるから心配しないでって」
なんだ。
「で、最近、ここで私と一緒に料理をしてるの。」
「Aが？ 料理？ うける」
「そんなこと言わないの！ 篤人君がリハビリ頑張ってるから、自分も何か頑張りたいんですって。あなたの彼女、可愛いじゃない？」
・・・うん、可愛いです、俺の彼女。
「この間の筑前煮は実はAちゃんが作ったのよ？ で、今日はバレンタインだからってお願いされて、はい、これ」
テーブルの上に出てきたのは、えーと、何だっけ、これ。
「ガトーショコラ。頑張ってちゃんとひとりで作ったから、後で食べてあげてね？」
「うん、解った」
絢子さんが帰ると、俺は先ずめし、その後Aが作ったと言う貴重なそのチョコのケーキをたべた。
絢子さんが教えた通りに作っただけなんだろうけど、あの、料理が苦手なAが、俺の為に作ったかと思うと、それだけで特別な気がした。
あの煮物もAが作ったって？
そう言えば、少し味が薄かった。
惜しかったな、A。
Aに会いたいけど、まだダメだ。
カレンダーに丸を付ける。
ダービーと呼ばれるその試合には出たいと思うけど、焦らずきちんと治そう。
でもなあ。
Aが、もう俺のものだという彼女の事を思い出しながら食べるガトーショコラは、甘くて、少し苦かった。
俺は今、恋をしてるんだなと思う。
中々悪くない。
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馨子(プロフ) - さゆさん» さゆ様、初めまして。ｺﾒﾝﾄありがとうございます。こちらのお話は、半年近く前に一応完結しているのですが、私もたまに、あのふたり、今頃どうしているかなと考えたりします。楽しんで頂けたようで良かったです。今後も宜しくお願い致します。 (2014年5月1日 15時) (
レス) id: f72e0ba777 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - すごく面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。キュンキュンきて、もう終わっちゃったーと残念です。続きが読みたくてたまらないです(笑) (2014年5月1日 14時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - ManAさん» ManA様、いつもありがとうございます。楽しんで頂けて良かったです。嬉しいです。新作も頑張ります！ (2013年12月3日 2時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
ManA(プロフ) - 最後まですごく楽しく読ませていただきました！本当にｷｭﾝｷｭﾝでした笑笑また新しく更新されるの楽しみにしてます☆ (2013年12月3日 0時) (レス) id: 669658a306 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - りくさん» りく様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。最後までお読み頂いた事、感謝致します。今日の試合はご覧になりました？篤人さんが出なかったので少々消化不良気味ですが、勝ったので良しと致しましょう。新作、頑張ります。またのお越しをお待ち致しております。 (2013年11月20日 14時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年10月17日 17時
