39 ページ39
あの夜、篤人が私に言ったのは、リハビリの間、誰とも会わないようにするという話。
チームメイトにも、私にも。
自分を追い込みたいのか、リハビリに集中したいのか。
私は、ちょっとさみしくなって、篤人に背を向けてしまった。
でも、私の狭いベッドでは、それも意味がなく、篤人はそんな私をそっと抱きしめた。
大人気なかった。
篤人がリハビリ頑張るって言ってるのに。
メールで謝ったけど、怒っていないだろうか。
あれから3日程経ったけど、篤人から連絡はない。
そんな事を考えながら、スーパーでカートを押していた。
カートの中は、ビールと食材が少し。
また篤人に怒られそう。
急に日本語で名前を呼ばれた。驚いて振り向くと、絢子さんだった。
「今日、お休み？」
「夜勤明けです。あ、この間はありがとうございました。とても美味しかったです」
「いいえ。ちょうど良かった、連絡しようと思ってたの」
私のカートを覗いて、少し笑って見せる。
「私に、ですか？」
「そう。篤人君にリハビリの事、聞いたわ。なんだかずいぶんストイックな話」
「ほんとに」
「それでね、篤人君、心配してて、Aちゃんの食生活」
「…えっ？」
「たまに、ごはん食べさせてやってって頼まれたの」
「…！ そんな、悪いです」
「私にって言うんなら、遠慮しないで？ 篤人君の分は作るんだし、ふたり分も変わらないから」
「…何て言うか、恥ずかしいんですけど」
「ふふ、あなたの事を心配したいのよ。 素直に甘えたらいいじゃない？ 作るのは私でも、お金を出すのは篤人君だし」
「…解りました。宜しくお願いします」
「作って届ける？ それとも、良かったら、篤人君ちへこれから来ない？」
それから私は約3週間の間、絢子さんが篤人の家に来ていて、私の勤務シフトがそれに合った時に、篤人のいない彼の家に通うことになる。
篤人は、朝8時位に家を出て、クラブハウスやリハビリセンターでメニューをこなし、夕方帰宅するらしく、昼間はほぼ留守にしていた。
私は夜勤明けの日に、そのまま篤人の家に向かい、絢子さんが料理をするのを眺めながら、お喋りしたり、たまに手伝ったりして時間を過ごした。
そして、お昼ごはんを一緒に食べて、作ってもらったお惣菜を持って家に帰る。
「なんか、私、太りそう」
「それは大変。」
実は、絢子さんにお願いしたい事があったから、この状況はありがたかった。
私ひとりでは絶対に無理な事。
でも何とかして形にしたい事。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 395人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
馨子(プロフ) - さゆさん» さゆ様、初めまして。ｺﾒﾝﾄありがとうございます。こちらのお話は、半年近く前に一応完結しているのですが、私もたまに、あのふたり、今頃どうしているかなと考えたりします。楽しんで頂けたようで良かったです。今後も宜しくお願い致します。 (2014年5月1日 15時) (
レス) id: f72e0ba777 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - すごく面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。キュンキュンきて、もう終わっちゃったーと残念です。続きが読みたくてたまらないです(笑) (2014年5月1日 14時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - ManAさん» ManA様、いつもありがとうございます。楽しんで頂けて良かったです。嬉しいです。新作も頑張ります！ (2013年12月3日 2時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
ManA(プロフ) - 最後まですごく楽しく読ませていただきました！本当にｷｭﾝｷｭﾝでした笑笑また新しく更新されるの楽しみにしてます☆ (2013年12月3日 0時) (レス) id: 669658a306 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - りくさん» りく様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。最後までお読み頂いた事、感謝致します。今日の試合はご覧になりました？篤人さんが出なかったので少々消化不良気味ですが、勝ったので良しと致しましょう。新作、頑張ります。またのお越しをお待ち致しております。 (2013年11月20日 14時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：馨子
| 作成日時：2013年10月17日 17時
