35 atsuto ページ35
「篤人？」
鍵が開く音がして、Aが帰って来た。
俺を呼ぶ小さな声がする。
コートを脱ぐ音がする。
ソファーに寝転がる俺の横にAの気配がする。
金縛りにあったように、俺の身体は動かない。
俺が眠っていると思ったのか、Aはその場から放れる。意識だけが、彼女を追い掛ける。
バスルームの方から、水の音がして、うがいをする音がして、しばらくすると、Aが、持ってきたブランケットを俺に掛けた。
ソファーの軋む音がしたから、Aが腰を下ろしたのが解った。
うつ伏せに寝ている俺の右の腿裏を、Aの手が撫でる。
「…センセ、俺の脚、治して？」
俺が突然しゃべったから、Aの手がビクッとなった。
でも、またすぐ撫で始める。
「おかえり、篤人」
「うん、ただいま」
「眠ってると思った。ちょっとびっくりしちゃった」
Aが立ち上がる。
あれっ？
「A、スカート？」
「あ、今日、例のデュッセルで」
ああ、発表会、今日だったのか。
Aはチャコールグレイのジャケットに、それより少し薄い色のスカート姿だった。
膝から下の脚が見える。
「スカート、初めて見た」
「そうかも。普段ははかないけど、今日はレセプションもあったし、完全にオフィシャル」
「それ、スーツなの？ 上脱ぐとどうなってんの？」
Aはジャケットを脱いでくれた。
「篤人が服に興味があるなんて変よ」
俺はようやく上半身を起こすと、いつもとは違って、髪を巻いているAを正面から見た。
「中はワンピースになってます」
Aは、スカートの裾を両手の指で摘まむと、お姫様のように膝を曲げてお辞儀をした。
シンプルなワンピースだけど、Aによく似合っていた。
Aの肩に軽くウェーブのかかった髪が揺れる。
「違うって。俺が興味あるのは服じゃなくてその中身」
Aの手を引き、自分の脚の間に座らせる。
後ろから抱き締めて、座ったことで少し裾が上がったスカートの、膝の辺りを撫でる。
「脚、大丈夫なの？」
「うん。そんなに痛みはないから」
まだ何か言いたげな唇は、この間とは違う色。その口紅をまた取ってやる。
キスしながら、Aの存在を確かめる。
俺は今少し弱っているのだろうか。
「言っとくけど、私、怒ってるからね」
「やっぱり？」
「先にお説教されるのと、後でされるのと、どっちがいい？」
「後って、なんの後？」
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馨子(プロフ) - さゆさん» さゆ様、初めまして。ｺﾒﾝﾄありがとうございます。こちらのお話は、半年近く前に一応完結しているのですが、私もたまに、あのふたり、今頃どうしているかなと考えたりします。楽しんで頂けたようで良かったです。今後も宜しくお願い致します。 (2014年5月1日 15時) (
レス) id: f72e0ba777 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - すごく面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。キュンキュンきて、もう終わっちゃったーと残念です。続きが読みたくてたまらないです(笑) (2014年5月1日 14時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - ManAさん» ManA様、いつもありがとうございます。楽しんで頂けて良かったです。嬉しいです。新作も頑張ります！ (2013年12月3日 2時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
ManA(プロフ) - 最後まですごく楽しく読ませていただきました！本当にｷｭﾝｷｭﾝでした笑笑また新しく更新されるの楽しみにしてます☆ (2013年12月3日 0時) (レス) id: 669658a306 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - りくさん» りく様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。最後までお読み頂いた事、感謝致します。今日の試合はご覧になりました？篤人さんが出なかったので少々消化不良気味ですが、勝ったので良しと致しましょう。新作、頑張ります。またのお越しをお待ち致しております。 (2013年11月20日 14時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年10月17日 17時
