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その後、何度か彼は私の元を訪れた。
右腿の診察の帰りにやって来ては、とりとめのない話をして帰って行く。
喉の方はもう大丈夫だったし、脚も順調に回復しているようだった。
治ったら、もうここには来ないのだろうと思うと、ホッとする反面、少しさみしい気もする。
このわずか2週間の間に、私の心は明らかに変化していた。
そして、この感情を持て余していた。
彼が顔を出すのを、楽しみにしている自分と、それを認めないようにしている自分と、どちらも確かに私だった。
カルテに入力された彼の生年月日は、私よりも4つも下だったし、これは最近知ったのだけれど、彼は日本でとても人気があって、サッカー選手としてもとても有望で、しかも私達は医師と患者という関係で、ただ気持ちのままに突き進む訳には行かなかった。
これは恋かも知れないけれど、封印しなければいけないと思った。
ただ彼の方も。
私に好意を持ってくれているような気がする時がある。
真っ直ぐに私を見つめる眼差しは、段々熱を帯びてくるようだった。
だから。
なおのこと、私の方がブレーキをかけなければと思う。
そんな風に、ため息と情熱と切なさで毎日が過ぎて行く。
その日は、天気も良く、11月にしては気温が高かったので、入院中の子供達が何人か中庭で日光浴をしていた。
『A、クリスマスは日本へ帰るの？』
『うーん、忙しくて帰れないかも』
途端に子供達の顔が曇る。
もう、みんな、なんて可愛いのっ！
『心配してくれてありがとう』
天使に癒されていると、ひとりが、私の後ろに向かって声を上げた。
『ウッシーだっ!!』
あっという間に彼は子供達に囲まれる。
ニコニコと接するその笑顔は、とても綺麗で、可愛らしくて、ずっと見ていたいほど。
胸が苦しくなる。ダメダメと思う。
ひとしきり子供の頭を撫でた後、病室へ引き上げる後ろ姿を見送りながら、彼はポツリと言った。
｢あの子達も、病気なんだよね？｣
優しい人なんだなと思った。
いつもはクールにしているけど、本当は。
｢そうよ、小さくても戦ってるの｣
戦う相手は病気だったり、さみしさだったり、不安だったり。
彼はしばらく子供達の姿を追っていたけど、やがて前を見たまま言った。
｢センセ、仕事何時に終わんの？｣
え？
｢めし、食いに行きませんか？｣
簡単にそんなこと言わないでほしい。
人の努力を何だと思っているのか。
行けるわけない。
私は逃げるように走り出していた。
｢行きませーん｣
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馨子(プロフ) - さゆさん» さゆ様、初めまして。ｺﾒﾝﾄありがとうございます。こちらのお話は、半年近く前に一応完結しているのですが、私もたまに、あのふたり、今頃どうしているかなと考えたりします。楽しんで頂けたようで良かったです。今後も宜しくお願い致します。 (2014年5月1日 15時) (
レス) id: f72e0ba777 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - すごく面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。キュンキュンきて、もう終わっちゃったーと残念です。続きが読みたくてたまらないです(笑) (2014年5月1日 14時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - ManAさん» ManA様、いつもありがとうございます。楽しんで頂けて良かったです。嬉しいです。新作も頑張ります！ (2013年12月3日 2時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
ManA(プロフ) - 最後まですごく楽しく読ませていただきました！本当にｷｭﾝｷｭﾝでした笑笑また新しく更新されるの楽しみにしてます☆ (2013年12月3日 0時) (レス) id: 669658a306 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - りくさん» りく様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。最後までお読み頂いた事、感謝致します。今日の試合はご覧になりました？篤人さんが出なかったので少々消化不良気味ですが、勝ったので良しと致しましょう。新作、頑張ります。またのお越しをお待ち致しております。 (2013年11月20日 14時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年10月17日 17時
