18 atsuto ページ18
「片付いてんじゃん？ そっち。 つーことは、書き物は終わったって事？」
この間まで雑然としていたデスクが綺麗に片付いている。そこを指差して、俺は言った。
「うん、今日、フランツに提出した。あとは直しだけ」
通りで、今日はビールが進むわけ？
それとも、いつもひとりでそんなに飲んでるの？
Aはまた新しい缶を持ってくる。
何本目？ 大丈夫か？
床に座って、俺が寝転ぶソファーに背中を預けている。
手を伸ばせばAに届いてしまう。
その、くるっとひねった髪を留めたクリップをはずしたい。
下ろした髪を見てみたい。
あー、ほんと、ただのスケベだわ、俺。
そんなスケベな俺の気も知らず、Aはぽつぽつと話し出す。
「篤人がいない間、ずっと考えてた」
「うん？」
「…色々理由にするなって言われたけど、私はやっぱり先の事とか、歳の事とか、篤人の立場とか、気になるの」
俺は、Aの耳とか、小さな肩とか、缶を持つ細い指とかを見てた。
黙って見ていた。
「気になるから、やっぱり無理って思うけど、だけど、篤人がいなくてさみしかったとも思う。さみしいとかって、本当はよく解らないんだけど、多分、さみしかった」
「…俺に、会いたかったんだ？」
くるっと振り向いてこっちを見た。目には涙が溜まっていて、今にもこぼれてしまいそうだった。
やべっ、俺、今、笑ってる。
「なんでそんなに嬉しそうなの？ バカ！」
えーん、と言って泣き出す。
えーんって。
「会いたかった、ものすごく。 私をこんなに情けなくして、篤人は本当に悪い奴！」
あーもーいいよね？ Aに触っても。
俺は「そりゃどーも」と言って、上半身を起こすとソファーに座り直して、泣いているAの腕を引っ張りあげて、自分の両脚の間に座らせた。
背中からAの身体を包んで、肩越しにその顔を見た。
「俺のこと、好き？」
ずるいよね、自分からは言わないくせに、Aに言わそうとしてる。
酔ったAにつけこんでいる。
「…好き、大好き」
俺の腕の中で向きを変えて、Aは俺の首に抱きついてきた。
静かな夜に、Aの泣き声だけが響いていたが、そのままずっと腕の中に閉じ込めていたら、いつの間にかそれは寝息に変わっていた。
ええー、この状況で寝ちゃうってどうなの？
「まじかよ…」
俺の理性を試すように、眠ってしまったAの身体は、少しだけ重くなった。
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馨子(プロフ) - さゆさん» さゆ様、初めまして。ｺﾒﾝﾄありがとうございます。こちらのお話は、半年近く前に一応完結しているのですが、私もたまに、あのふたり、今頃どうしているかなと考えたりします。楽しんで頂けたようで良かったです。今後も宜しくお願い致します。 (2014年5月1日 15時) (
レス) id: f72e0ba777 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - すごく面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。キュンキュンきて、もう終わっちゃったーと残念です。続きが読みたくてたまらないです(笑) (2014年5月1日 14時) (レス) id: 6fd6da2112 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - ManAさん» ManA様、いつもありがとうございます。楽しんで頂けて良かったです。嬉しいです。新作も頑張ります！ (2013年12月3日 2時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
ManA(プロフ) - 最後まですごく楽しく読ませていただきました！本当にｷｭﾝｷｭﾝでした笑笑また新しく更新されるの楽しみにしてます☆ (2013年12月3日 0時) (レス) id: 669658a306 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - りくさん» りく様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。最後までお読み頂いた事、感謝致します。今日の試合はご覧になりました？篤人さんが出なかったので少々消化不良気味ですが、勝ったので良しと致しましょう。新作、頑張ります。またのお越しをお待ち致しております。 (2013年11月20日 14時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年10月17日 17時
