甘くないケーキ Kei.inoo[eiji] (ページ2)

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カウンター席に座る。

深夜ということもあり私以外に客はいないようだ。
この店は、何時までやっているのだろうか。
でも、この店で足を休めることができたのだから、
細かいことは気にしないで何か飲み物でも頼もうか。

「すいません、烏龍茶下さい」

「かしこまりました」

オーナーであろう人は、手際良くグラスに烏龍茶を注ぐ。

証明に照らされた烏龍茶は、輝いて見えた。

「フフッ、バーに来たのに烏龍茶なんですね？」

「はい？」

20代半ばのバーテンダーに、小馬鹿にされた気がするのだが。
烏龍茶はいけなかっただろうか？
でもAはこのあと歩いて帰るので、アルコールは飲めない。

「こら伊野尾くん、お客さんなんだからもう少し言葉を選びなさい」

伊野尾くん…おそらく彼の名前なんだろうな。

「すみませ～ん。でも烏龍茶頼んだ人、僕久しぶりに見ました。
　このあと何か用事でもあるんですか？」

烏龍茶を頼んだAがそんなに物珍しかったらしい。
確かにここはバー兼カフェのような店だから、無理もないかもしれない。

「私、終電乗り遅れちゃって…だからこのあと歩いて帰るんです。」

「そうなんですか。じゃあ、僕送っていきましょうか？」

「いや、大丈夫ですよ。私一人で帰れます」

たった今出会った人に、しかも二言くらい話しただけの人に
家に送ってもらうなんて申し訳ない。
しかも相手は男だ。
警戒してるわけではないけど、あまり気が進まない。

「遠慮しなくていいですって。マスター、僕もうあがっていいですか？」

「ああ、かまわないよ。」

「いや、だからいいですってば…」

「さぁ、行きましょう。遠慮しないで下さいよー。行きますよー。」

私は飲みかけの烏龍茶をカウンターに置いて、急いで会計を済ませた。
もう、本当…

なんて自由人なんだろう。

「すみません、うちのやつあんなので。
　もしよろしければまた来て下さい。彼、きっと喜ぶので」

「は、はい…」

また…か。

いつ来るかはわからないけど、とりあえず頭に入れておこう。