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「では、私たちからも皆さんに……」
先手を取って切り出したのは、人間の中では最年長の三丸だ。彼は老舗洋菓子店の大箱の包装を解いて箱を開ける。中身は個包装のクッキー詰め合わせだ。
我先にと手を伸ばそうとするかれんさまを抑えながら、三丸はテーブルの上に個包装を広げていく。
「好きな種類のを取っていってください。一人3個までですからね」
「わ、かわいい……」
「お前も何か気になるのあるなら、俺が取っといてやるよ」
テーブルの周りに集まり、種類豊富なクッキーたちを眺めては語らうボーダーメーカーたち。それを眺めていた誉はわざと大声で独り言を言う。
「へぇ、わりと良いセンスしてるじゃねぇか」
「……急にどしたんすか？」
「でもな！オレのほうがもっとすげぇモン用意できるんだ！いくぞ、メアリー！」
誉は事前の打ち合わせ通り、メアリーに大きな箱を持って来させた。そして誉が指を鳴らすのに合わせ、箱を開けるとそこには立派な船を模したチョコが……ちょっと溶けかけた姿で飾られていた。
「……あれ、こんなんだったか？」
「この部屋は非常によく暖房が効いている。繊細なチョコ細工は熱に弱いからな」
「と、ともかく！どうだ！これが古檜山誉の実力だ！」
堂々と胸を張る誉の後ろで、霧雨亡霊区域が溶けたチョコをすくってぺろりと舐めた。
「……ふーん……すごいと思うよ」
「なっ……『ふーん』って何だよ、『ふーん』って！オレとメアリーが作った作品なんだぞ！もうちょっとなんかあるだろ！」
無関心そうな霧雨に対して怒る誉に、暁人が仲裁に入ってくる。
「ごめんごめん、霧雨さんって味とか物の良し悪しとかにすごい鈍感なとこあるからな……あいつなりに感心してるんだろうし、大目に見てやってくれよ」
「……そういう都市伝説なら仕方ないけど……ふん」
誉は拗ねてしまったが、他の面々は彼らの作った豪勢な船に揃って素晴らしいと感想を述べていた。……一人のボーダーメーカーを除いて。
蓮華は持ってきた菓子の袋を見つめて逡巡していた。
「どうしよう……あんなのの後に出したら、絶対しょぼいとか言われる……」
彼女が作ってきたのは簡単なガトーショコラ。女児っぽいファンシーなシールのぺたぺた貼られたラッピングもケーキ本体も、誉のチョコに比べればずいぶん安っぽく見える。
彼女の不安をよそに、今度は暁人が中心に立って言った。
「手作りといえば、今年は俺と霧雨さんで手作りチョコ用意したからな〜！」
ラッキーカラー
あずきいろ
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