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街の中はところどころにバレンタインに向けた装飾や冬らしい飾りが並んでいる。
ラッピング用の小袋とリボン、贈答用のクッキーにチョコパウンドケーキ……と買い物リストを眺め、行き先の地図を確認しようとした学はスマホを忘れていることにようやく気づいた。
「あ、あれ？スマホどっかに落としちゃったすかね？それとも家に忘れてきちゃった！？」
あたふたと鞄の中や服のポケットを手当たり次第に探る学。その正面に突如、和装の少女がひょっこり現れ声をかけた。
「五月蝿いぞ、学！そんなところでなにをしておる？」
「ひょわぁ！？……って、かれんさまじゃないすか！」
どうしてこんな街中に、と問おうとしたところ、追いかけてきたのであろう紋がやってきて口を開いた。
「かれんさま、一人であまり好き勝手に動かないでください。……おや、学君じゃないですか」
「三丸さん！よかったぁ、これで迷子にならずに済みそうっす！」
「……私は君の親でも先生でもないのですけれどね」
世話する相手が増えてしまった、と軽くため息を吐く紋をよそに、かれんさまは自分の興味の赴くままに話し始めた。
「して、学は何故こんなところにおるのじゃ？赤マントは一緒ではないのか？」
「実は、お使い頼まれて買い出しに来てたんすよ。でも、スマホ忘れてどこ行ったらいいか分かんなくなっちゃって……」
「お使い？」
「バレンタインにみんなに配る用のお菓子の準備っす。この店の焼き菓子を、って言われてたんすけど……三丸さん、知ってますか？」
学は赤マントに渡された買い物メモを紋に見せた。紋もよく菓子折りを買いに行く有名店の名前が記されている。そういえば、以前ここのお菓子を手土産に渡したらいたく気に入っていたな、と思い出しながら紋は脳内でルートを検索していく。
「……君のアパートからは少し遠く来すぎているようですね」
「ええ！？やっぱりどっかで道間違えてたんすかね……」
「せっかくですし、私もお使いに付き合いますよ。それに、この店の入っている百貨店で、ちょうどチョコの特設コーナーができているはずですから……かれんさま、なにか美味しいチョコを買ってあげますからね。学君にも何かいかがですか？」
「本当か！？」
「ほんとっすか！？」
チョコを買ってあげる、と言われて目を輝かせる二人。
紋は学のスマホから来ていた連絡に「学君と会いました。買い物が終わり次第そちらへ送ります」と返し、二人を連れて歩き始めた。
ラッキーカラー
あずきいろ
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