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「……ってことがあってさ、ご主人からチョコ貰っちゃった!良いだろ〜!」
この世界のどこかに建つオンボロ校舎の、都市伝説たちの溜まり場と化した2年4組の教室にて、雪は友人の都市伝説たちに白玖からのプレゼントを自慢げに見せびらかしていた。それを眺めるのは雪と同じ歳くらいの少年……といっても歳は100を超えるほどの二人、メアリー・セレストと地獄駅の車掌さんだ。
「え〜?なんかのご褒美とか?」
「ご主人はバレンタインのプレゼントって言ってたけど……バレンタインって何?」
「なんだっけ……確かお菓子贈るイベント?だったよね?」
チョコの箱を眺める車掌さんと雪に、メアリーがすっと割って入る。
「メアリーは知っている。バレンタインデーは、恋人や親しい人に花やメッセージカードを贈る日のことだ。しかし……チョコレートを贈るというのは初めて聞いた。そもそも、メアリーの知っているチョコと今のチョコは違うようだしな」
「そうなの?メアリーってヨーロッパの都市伝説なんだし知ってるかと思ったんだけどな〜」
人間の世界が変わるのは早いからな、と車掌さんに対してメアリーは返した。彼は雪の方に向き直ると、無感情な声で静かに言った。
「ともかく、雪は海蓮に返礼をするべきだろう。尽くしてもらったら、それのお返しをするのが道理だ」
「え、お返し?……そっか、そうだよな。貰いっぱなしってのも失礼だし……でも、僕なんかが選んだもので喜んでもらえるかな……」
「返さない方がよほど失礼ではないだろうか?それに、おまえの主人との仲はそれっぽちで傷つくほどのものでもないはずだ」
でも、と吃る雪の背中を車掌さんが叩いて勇気づける。ぴゃ、と悲鳴をあげて睨みつけてくる雪を無視して車掌さんは自分の意見を述べ始めた。
「そーだよ、お返しはした方がいいって。もし不安なら、俺も相談に乗るし、佳澄にも色々聞いてこよっか?」
「何でそこでお前の契約者が出てくるんだよ〜!そいつは関係ないだろ!」
「え〜、だってぇ、人間のことなら人間に聞いた方が分かりやすいんじゃないの〜?」
ほけほけした雰囲気で話す車掌さんの横で、メアリーも頷いている。
「それにはメアリーも同感だ。後で誉にバレンタインについて相談してこよう」
「はあ〜!?ほっとけよ!俺は他の人間の力なんて借りないからな〜っ!」
怒った雪は二人のことを校舎から追い出してしまった。
追い出された二人は揃って首を傾げながら、各々の契約者の元へ帰っていった。
ラッキーカラー
あずきいろ
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