16、感情移入 ページ16
・
『実験体に感情移入するな』
ポッキーさんの言葉が、頭に響いた。
その言葉は、ただポッキーさんが、私が変に傷つかないように、言ってくれたものだと分かっている。
この赤髪さんの調査において、これから新しい記憶を増やしていくことは、多分意味のないことなんだと、思う。
酷い言い方をしちゃうけど。
もし、赤髪さんが、私のことを覚えていられたら。
そう、たまに考えてしまうけど、
それは感情移入、だ。
「……はは、いやぁ、俺……何言ってんだろ。ごめんね…」
苦笑いの赤髪さん。
赤髪さんは変わってきている。
でも私は、変わらなくていい。
「……はい」
ポッキーさんと約束したのだ。
いまも孤独なポッキーさんの、手助けをしてあげなきゃいけないのだ。
「それじゃあ、もう行きます」
「うん」
＊
ポッキーさんの部屋にお邪魔すると、ポッキーさんはもう、帰って来ていた。
私が、他に異常はなかったことを伝えると、
「まずは様子見ることにするよ」
そう言って、ため息をついた。
酷く疲れていた様子だった。
「お茶、淹れるよ、ポッキーさん」
「うん、ありがとう」
「ポッキーさん、もっと休まないと…過労死しちゃうよ？」
「大丈夫だよ…今はただ忙しい時期で」
「大丈夫じゃないから言ってるんだよ。実験とやかくの前に、倒れたりしたら、元も子も」
「ごめん」
ポッキーさんはぴしゃりと言い放った。
「ちょっと…静かにしてくれないかな」
・
私は黙って、
お茶をポッキーさんに手渡した。
２人で座って、お茶を飲みながら少しの間ぼーっとしていた。
そして数分後、ポッキーさんは落ち着いてきたようで、静かに話し出した。
「実験体さんのことは……少し分かった」
「…」
「僕達の研究チームに捕えられるまでは、アメリカとかヨーロッパを転々としていたみたい。名を名乗らない、20代ぐらい、180cmほどの男と取り引きをしたと、いくつかの証言もあって」
「…」
「Aが実験体さんに聞いた限りでは、実験体さんの記憶が90分しかもたないわけは、事故、なんだよね？」
「うん…」
「恐らく、実験体さんはその事故をきっかけに、どこかの組の誰かに買われ、殺し屋としての道を歩み始めたんだと思う」
「…それって、つまり」
「うん、それまでは、日本のどこかで生まれ育った…普通の人だったんだと思う」
・
��普通��だった時代の赤髪さんを想像し、
頭の中で、それを今の赤髪さんと照らし合わせてみる。
少し頭痛がした。
＊
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←15、あなたとの時間
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サンゴ(プロフ) - すごい！もうほんとすごい((語彙力))更新、頑張って下さい！！ (2017年12月7日 19時) (
レス) id: 7fba23456b (このIDを非表示/違反報告)
たつどし(プロフ) - この物語のストーリーについ惹き込まれてしまいました！登場人物の表情や細い動作がわかりやすく読みやすいです！！ 更新停止となっていて少し寂しいです…プレッシャーをかけるつもりはありませんが、また更新を再開して下さるのを期待しています。色々頑張って下さい (2017年5月8日 2時) (レス) id: 15219600b7 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - コロボックルさん» ありがとうございます！！励みになります頑張ります(((^-^))) (2016年10月18日 22時) (レス) id: e3490e59f8 (このIDを非表示/違反報告)
コロボックル - ポッキーさんと赤髪さんの小説が読めるなんて!更新頑張ってくださいね!! (2016年10月18日 7時) (レス) id: baeee8abc2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひな | 作成日時：2016年4月7日 0時
