15、あなたとの時間 ページ15
＊
それから、赤髪さんとたくさん話したけれど、
他に抜け落ちた記憶は確認されなかった。
ほっと安堵。
「…あの、Aさん」
「俺の記憶、もしかして…消えていってる？」
「……」
赤髪さんは苦笑いした。
「今覚えてる記憶が無くなれば……俺、ほんとに、からっぽ……ですね」
「……そんなこと…」
とは言いつつ、かける言葉がほかに見当たらない。
「じゃあ今のうちに…俺の残りの記憶、Aさんに託しておこうかな…」
「え…」
「と、言っても、もう他には殆ど無いんだけどね。俺は気付けば暗殺者だったから」
「…」
「記憶が90分しかもたないわけは……事故かな、たぶん」
「事故……」
恐らく、もうポッキーさんがそこらへんは調べ終えていそうだけど、一応聴いていておく。
「事故…日本の…どこだろう、あそこは…」
うーんって唸ってる。
「都心部ですか？事故というのは交通事故？」
「車はたくさん通ってて……交通事故だと思うよ」
情報はアバウトすぎる。この情報からどの場所かを判断するのは不可能に近いだろう。
「…明日も、また同じ質問をさせていただきます」
少し時間をおいてみよう。
「あ、Aさん」
去る私に赤髪さんが声をかけた。
「あの、これ………後になったら、忘れててほしいんですけど、」
「……？」
「俺の記憶力、戻すことはできますか？」
・
え、
「……どう、して」
私は驚いて、赤髪さんのほうを見た。
「忘れちゃいけない、何かがある気がするんです」
記憶がひとつ抜け落ちた代わりに、
何かを思い出そうとしているんだろうか。
そんな気がした。
「…何か、思い出したい昔の記憶が…あるってことですか？」
「違います」
即答。確かに変な質問だったけど。
「忘れちゃいけない気がするんです」
「……」
「今、この時間、あなたとの時間」
・
記憶する力を取り戻そうとする、意欲(？)。
そう、手元のノートにメモしようとしたけど、
手が動かなかった。
私は以前、赤髪さんに言ったことがある。
自分は生きることに不向きだと言った赤髪さんに。
あなたは思い出さなくていいんだよ、って。
空っぽだからきれいなんだ、そう言った。
あなたがここに来てよかった、私が覚えてられるから、って。
赤髪さんはもう忘れただろう。
・
「……」
何か、何か言おうとして、でも何も言えなかった。
「Aさん」
その赤髪さんの声が、切なくて。
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サンゴ(プロフ) - すごい！もうほんとすごい((語彙力))更新、頑張って下さい！！ (2017年12月7日 19時) (
レス) id: 7fba23456b (このIDを非表示/違反報告)
たつどし(プロフ) - この物語のストーリーについ惹き込まれてしまいました！登場人物の表情や細い動作がわかりやすく読みやすいです！！ 更新停止となっていて少し寂しいです…プレッシャーをかけるつもりはありませんが、また更新を再開して下さるのを期待しています。色々頑張って下さい (2017年5月8日 2時) (レス) id: 15219600b7 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - コロボックルさん» ありがとうございます！！励みになります頑張ります(((^-^))) (2016年10月18日 22時) (レス) id: e3490e59f8 (このIDを非表示/違反報告)
コロボックル - ポッキーさんと赤髪さんの小説が読めるなんて!更新頑張ってくださいね!! (2016年10月18日 7時) (レス) id: baeee8abc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひな | 作成日時：2016年4月7日 0時
