12、愛 ページ12
＊
ポッキーさんは、依存体質だった。
一家のボスの、妾の子であったポッキーさんには、
居場所というものがなかった。
だから、幼い頃から、
唯一の同年代であった私に、
酷く独占欲を抱いていた。
私が他の友達や、いろんな人たちと深く接触するのを嫌がった。
どんなときも、僕だけは傍にいるから。
そう言って、私の自由を奪った。
ポッキーさんは、賢く、健気で、世渡り上手な、典型的な優等生だった。
「A」という存在を除けば。
大学生になって、何かに依存することも
少なくなってきたほうだと思う。
でもそれは、突然一気に吐き出されたりする。
今回の調査が、その例だ。
＊
ノックを、5回。
失礼します、って、扉を開けた。
疲れた様子の、ポッキーさんと目があう。
「あの……昨日はごめんなさい。架さんも大変なときに、迷惑になるようなこと言っちゃって」
「いや、僕も怒鳴りつけてごめんね。Aが僕から離れていくなんてことないのに」
「うん…」
「実験体さんが心配になっちゃったんでしょ、A優しいから！大丈夫、明後日には戻ってくる」
「何を…してるんですか？」
「あいつ、おかしいんだよ。知能指数も、体のつくりも、人じゃないみたい」
「……」
「だから特別研究室で実験。あいつの記憶を探すいい機会でもあるしね」
「…」
「そんなカオすんなっ！構ってほしいなら相手してあげるから！」
今夜どう？ってケラケラ笑ってる。
もう、そんな暇ないくせに。
「赤髪さんに、無理させるわけじゃ、ないよね？」
「……」
「架さんも、無理しないで」
「架って呼ぶな」
ポッキーさんの回転椅子が、音を立てて軋む。
「僕を嫌ったあのひとがつけた名前だ」
「……ごめんなさい」
「僕はAが愛してくれるならそれでいいんだよ。僕はあの実験体で、金も地位も手に入れる。一番上に立ってやる。あのひとは、路地裏のホームレスになってもらって構わない」
いつもなら、冗談で言うようなセリフ。
ポッキーさんの瞳は、黒い。
「そしたら結婚だぞA！さあ、Aは花嫁修業でもしてきなさい」
「ポッキーさん…」
そんなに笑っちゃって。
式を挙げる前に、そろそろ疲労で死ぬよ、ポッキーさん。
ま、死神みたいなこの人には、死ぬなんてありえないか。
＊
ポッキーさんは、ヤンデレとか、そんな人じゃない。
ただ、愛に飢えてるだけだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サンゴ(プロフ) - すごい！もうほんとすごい((語彙力))更新、頑張って下さい！！ (2017年12月7日 19時) (
レス) id: 7fba23456b (このIDを非表示/違反報告)
たつどし(プロフ) - この物語のストーリーについ惹き込まれてしまいました！登場人物の表情や細い動作がわかりやすく読みやすいです！！ 更新停止となっていて少し寂しいです…プレッシャーをかけるつもりはありませんが、また更新を再開して下さるのを期待しています。色々頑張って下さい (2017年5月8日 2時) (レス) id: 15219600b7 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - コロボックルさん» ありがとうございます！！励みになります頑張ります(((^-^))) (2016年10月18日 22時) (レス) id: e3490e59f8 (このIDを非表示/違反報告)
コロボックル - ポッキーさんと赤髪さんの小説が読めるなんて!更新頑張ってくださいね!! (2016年10月18日 7時) (レス) id: baeee8abc2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひな | 作成日時：2016年4月7日 0時
