きみを好きな理由のすべて3【紫】 (ページ41)

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自問ページ41

その時、

Aの隣に後ろから手が伸びてきて、
Aの空のコップに、お酒が注がれた。

「ちょっと、先輩、女の子にはやめた方がいいですって、嫌われますよ」
にーちゃんが苦笑い。

「えー？Aちゃんお酒飲めないの？意外と清純派だね～」
「飲んでみなよ、これくらいじゃ酔わないから」
チャラそうな先輩二人は、ヘラヘラ笑ってる。
Aは微笑んで、コップを手に取ってくっと飲んだ。
ああ。

「ありがとうございます、先輩」
「んーん、いっぱい食えよ～」
Aの肩を触って立ち去る先輩たち。触るなよ…。

Aのコップを掴んで、残りのお酒を飲み干す。
ああ、ってあおいくんが声を出した。

「ごめんねAちゃん、先輩たちも酔ってんだよ」
にーちゃんが本当に申し訳なさそうにする。
「いーよ全然。チューハイなら大丈夫」
そう言いながらAが立ち上がった。

「どこ行くんA」
「先輩のとこー。ナンパされたから行ってみるのー」
「A？あんなん見境なしやって分かってるやろ？」
「のっくんは口出ししないで」

Aがふふんと笑って歩いていく。
向かいであおいくんが大袈裟にため息ついた。

「おいかけなくていいの、のっくんー」
頬杖ついてる。先輩たちが置いていったお酒の缶はもう空みたい。いつの間に？

肩が重くなって、テーブルに頬をくっつける。
にぎやかになってる奥のテーブル。見てられない。

「また言うんでしょ、Aは変わったんやーとか。文句ばっかり言っててもAちゃん離れてくばっかりだよ。ここ縁結び合宿だよ。先輩に飲まされるAちゃん見てたいの？」
「あんまり意地悪なこと言うの、俺も良くないと思うよー。回りくどいこと言わずに…俺んとこ来いよ！ぐらい言えば？」
ケラケラ、にーちゃんまで面白がってる。

「そんなん」
ぼうっとしてきて、目を閉じた。
「何度言うたか分からへんわ」

足りなかったの。
何が？

俺、俺の事見てないAでも、
いつかこっち見てくれるようになるかもって、
思えるから、それでいいから、
今も、好きなのに。
何度もそう言ってきたはずなのに。

「えー…のっくん、一口しか飲んでないのにもう酔ったの？」
あおいくんが俺の肩を揺さぶる。

「不思議でしょー、この人。Aちゃんと中学生の頃からこうなんだって。進歩してないの。Aちゃん、別に鈍感じゃないのに」
あおいくんはにーちゃんに寄っかかる。
「色々、本人しか分からないことがあるんでしょ。誰だって一番近くの温もりに触れてたい」
「…一番近く？」
「うん。都合のいい位置にいる人なら誰でも」