きみを好きな理由のすべて3【紫】 (ページ11)

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みんなの財産ページ11

まるで面白みのない冬休みを過ごして、
センター試験を終えた。
一次だけでどうしても終わりにしたいと思ってたから、
二月初めの合格通知には飛び上がって喜んだ。

個別試験だとか二次がまだある子が落ち着いたら、みんなでご飯に行こうねって約束。
お母さんや祖父母、お父さんにも連絡して合格を報告して、来月会いに行くって約束した。
先生に合格発表をした後は自由登校が続く。
まだ空が明るいうちに、ぷんちゃんと一緒に校門を出た。

そろそろ本当に、離れ離れだねって話。
冬特有の、薄曇りの空を見上げて、冷たい空気を吸い込んだ。

「ありがとねAちゃん」
「んー？突然どうした！」
「卒業式でとかやったら、バタバタして言われへんかなと思って。ほんま、入学式で初めて会って、立川さん東京なんやーとか言うてたの、昨日のことみたい」
「ふふ、懐かしい。まさかここまで長続きするだなんてねー」
「俺たちやっぱいいコンビやってんて」
「これからも同じ学校通えたら良かった」
「うん、本当」

学校と、周りの景色を眺める。
この景色とももうバイバイだな。
友達に会う目的以外で、戻ってくることは無いだろうし。

「ぷんちゃんは一人前の保育士になったら、また私大阪に来るよ」
「何やねんそれ…」
ぷんちゃんははっと笑って、口を閉じて、眉を吊り下げる。
「寂しくなんなぁ」

「そんなに悲しまなくても」
「ほんまに悲しいんさ～」
「…突っ込むかと思った」
「東京行っても連絡ちょうだいな。俺もする。そんで、正月とかに帰ってきて」
「何で」

思わず笑う。
「こっちが地元みたいだね」

「結局受験だとか何とか言って、大阪らしいとこあんま行けてないんちゃうの？」
「ここ近辺にはだーいぶ詳しくなったよ」
「んーん、Aちゃんは大阪を全然知らんねん。もう、十年いてもいいくらい！」
「まさかそんなに言ってくれるなんてなぁ」

良い友達に恵まれた。
ずっと一人ぼっちでいいと思ってた。
でも世の中はもっと親切で、こんなにいい人を、私の前に連れてきてくれた。

何となく二人で握手をして、それが何だかくすぐったくて、
派手に両手を広げて、軽くハグをした。

ぷんちゃんの言う通り、いつかはのっくんにも挨拶をして行かなきゃ。
それとも、もう会わない方が良かったりして？
…なんてね。

ぷんちゃんとこうしてる時でさえ、
あの笑顔を思い出す。
胸がくって苦しくなるってことは、そうだね、
私間違ってたんだね、
苦肉の策だったとしても、のっくんの代わりなんて、いなかったんだ。

ごめんね。のっくん。