青空をうつすような：３（茶） ページ43
俺がぷんちゃんのことを褒めると、
ぷんちゃんはよく言う。
泣いて、諦めず努力した跡が、
どれだけ楽譜に残っていても、
どうせステージで評価されるのは、この身一つ。
俺自身、物心着いた頃から鉛筆を握って、
テストというテストとか検定では、一番上まで上り詰めてきた。
英才教育がそうしたんじゃない。
俺の努力がそうしたんだって思うけど、
何事も努力することが大事なんだって、
大人が言ってくれる言葉も、今となっては綺麗事に聞こえる。
結果を残さなきゃ意味が無い。
俺を評価する材料に、
辛くて流した涙なんて入っていない。
ただ、つけられた点数が何点か、ただそれだけ。
俺は今まで、そうやって頑張ってきた。
Aも、裕大もそう。
ただ、例え今月の模試の結果が二位でも、
一生懸命努力して勉強したことが、自分にとって無意味だったとは思はない。
努力は無駄にならない。
積み重ねたことが絶対力になる、それが勉強。
それでもちょっと、羨ましくも思うわけ。
ぷんちゃんは勉強しながら、ピアノをしてる。
ぷんちゃんに全国模試一位を取るのが不可能だとしても、
自分の全てをかけて、他に頑張っていることがある。
ぷんちゃんから見える景色は、どんなものだろう。
「野崎さんもやってみる？ピアノ」
ぷんちゃんが俺を見上げてそう言うから、はっとした。
「…いやいや、俺には無理だよ、器用じゃないし…ほら、小さい頃からやってる子じゃないと」
「こういうのって慣れやんか、Aちゃんも始めたのって小学生上がったあとやったし」
「…それ十分昔じゃん」
「もー、Aちゃん最近来おへんから、暇やねん！」
あ、そうか、そういえば。
「最近A、ピアノ教室来てないって言ってたね」
ぷんちゃんは不貞腐れたように、椅子の背もたれに寄っかかった。
「そーなの。忙しいのかなぁ、それか、ピアノ嫌になったか、俺が嫌になったかどっちかやな！」
もはや、自暴自棄？
「…え、そうなの？」
「え？」
「Aに、ちゃんと理由聞いた？」
「…何で？っては言ったけど、何となく、とか…。詳しくは聞いてへん。ほんまに、俺と行くのが嫌やとか言われたら辛いし…」
「…俺…」
「ん？」
ぷんちゃんは首を傾げる。
「本当にまとも な、理由あると思ってたよ。だってあのAが、サボりとか…」
「…まともな？」
「ぷんちゃんは言い難い、理由が有るんじゃないの」
何となく、不思議だけど、
Aは途中で投げ出す子じゃないって、わかる。
「…俺には言いにくい理由って何？」
「さあ、それは見当ついてないけど…」
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作者名：ひな | 作成日時：2019年10月18日 21時
