明日が心配で ページ20
＊
「のっくん、起きて、駅着いたよ」
Aが、俺の肩を優しく揺さぶってる。
目を開くと同時に立ち上がって、バスから降りる。
また寝てた。
俺がバスで眠るなんて中々ないのに。
多分、寝不足だから無意識だと思うけど。
バス停から少し歩けば、
そこはAが小学生の時に居た、施設。
わかりやすく言えば孤児院で、
身寄りのない子供を自治体が保護してる場所。
昔はそうじゃなかったらしいけど、
今は施設の子供たちなんて穏便で、
最初は心配だったけど、Aも虐められるなんてことはなかったみたいだった。
それを確かめるべく施設に通いつめ過ぎたがために、園長先生とは知り合いになった。
俺のところに手紙が来たのも、そういう経緯。
園長先生は知っている。
俺が、Aを、
お母さんには会わせまいとしていることを。
だから、
俺宛に、Aが見ないように手紙を送った。
最近、
施設の近くを、Aの母親らしき人が彷徨くようになっているという、情報を含んだ手紙。
「…園長先生、元気かなぁ」
Aは呑気に俺の隣を歩く。
「園長先生、お母さんが施設の近くまで来てるかもしれないって教えてくれてたけど……園長先生、お母さんのこと見たことないから、どうなんだろう」
Aが施設に預けられたのは、お母さんが家を出ていった後のことだから。
「…また、海の家の時みたいに、人違いかもしれへんしなぁ」
「うん…茶髪で小柄な人って、アバウトだもんね」
少し見慣れたコンクリートの道。
靴底を擦るように歩いていたら、
隣のAがそっと、黙って俺の手を握った。
冷たい。
あの日みたいに。
「A、もしかしてここまで来て、怖気付いてるん？」
「そんなことないもーん」
笑いかけたら、Aはそっぽを向く。
「…ね、のっくん」
「ん？」
「のっくんはさ、この先、おれがどうなっても、一緒にいてくれる？」
不安、なんかな。
A、それが。
不安にさせちゃうくらいなら、
本当、俺は駄目な兄貴やなって、思う。
「いつからそんな甘えん坊になってん、A」
「…ごめん」
「らしくないやん、今日も張り切ってここ来てんのに」
「ほんとだね…」
「A？」
名前を呼んで、こっちを見上げる、
その頭をいつもみたいにそっと撫でた。
Aがくすぐったそうにふふって笑う。
「大丈夫。いなくなったりせえへんよ」
「…うん」
「コドモの明日が心配で、うかうか目も離されへん」
もう、ってAが笑う。
その手をきゅっと握り直した。
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cosmos(プロフ) - 中等部組のところ、もしかしてBlessingの歌詞ですか？笑 いつも楽しく読んでます。更新お疲れ様です!! (2018年11月3日 21時) (
レス) id: 8837544c77 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - 続編待ってました〜〜！！！更新楽しみにしてます♪ (2018年10月28日 10時) (レス) id: cf9cb2a359 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひな | 作成日時：2018年10月28日 5時
