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どうかした◆13.10.19 ページ45




「あおい!Aは?」

大阪公演1部終了直後の楽屋に、
母さんが飛び込んできた。


俺は首を横に振る。
「Aがどうかしたの?」
「どうかした。だから探してる」
着替えようと思ってリュックサックを抱えていたのを下ろして、母さんに続いて楽屋を出る。

廊下を歩きながら人1を探していると、
トイレから出てきたげるたんと鉢合わせた。


「あっげるたん、A見てない?」
咄嗟に声をかけると、げるたんは汗を拭きながら、
「見た。開場の一般入口のとこ。きさりんといたよ」
そう言った。
「Aちゃんがどうかしたの?」

「ううん、ありがと。おつかれ!」
「うん」

入場入口に向かうと、

人1の後ろ姿はあった。
きさりんと並んで、
三人の女の人と向き合って、何か話しているのが見えた。

一人の女の人は泣いていた。
でも、それは嬉し涙に見えた。

母さんを見ると、
まだ行くな、ってアイコンタクトで言われる。


女の人達がペコペコ頭を下げながら、
会場を出て行ってから、

母さんが人1達の方に駆け寄ったので、
俺もそれに続いた。


「あ、お母さん」
って、振り返って声を出したのは、きさりん。
振り返った人1は、疲れた顔をしていた。

「…A、今の人たちがそうなの?」
母さんは真剣な顔付きで、人1を見下ろした。
人1は俯いて、頷いた。

「…何が、どうしたの?」
俺はわけがわからなくて、三人の顔を順番に見る。
黙る母さんと人1を見て、きさりんが口を開いた。

「…今のお客さん、チケットを忘れて、開演前に泣いてたみたい。僕が見てない所で、Aちゃんが対応してて」
………それで。
「Aは、中に通した、ってこと…?」

きさりんは黙ってすぐに頷いた。
さっきの女の人は、水色に身を包んでいた。
それを思い出した時、人1の気持ちを一気に味わったような気分になった。
…でも…。


「お母さんの目を見て、A」
母さんは、辛そうな表情だった。

人1はゆっくり顔を上げる。
そして、消え入るような声で、
ごめんなさい
って、言った。

「…何で、他の誰にも相談しないで、こんなことしたの?」
「……」
「怒られるから、って思ったわけじゃないでしょ?子供じゃないから、って見栄張ったわけでもない」


「…万が一、誰かに止められるのが、嫌だったから…」


「……」

「…一度中に通して、公演が始まっちゃえば…母さんにもきさりんにも、止められないから」

見せてあげたくて◇13.10.19→←どうしようもない◇13.10.19



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ひな(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!!申し訳ありません、うっかり忘れてました…(_ _)更新頑張ります、よろしくお願いします…! (2018年10月7日 19時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
- 楽しみにしてます!これからも更新頑張ってください〜!あ、あと(人1)の変換ないので作るか全て(名前)に統一して下さるとありがたいです! (2018年10月7日 16時) (レス) id: aa9580c9fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひな | 作成日時:2018年10月6日 5時

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