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せっかくやし◇13.04.29 ページ22

ステージの上に立つと、
そこにお客さんがいなくても、いるような気分になる。
いくつもの目が見える。
それ全てが、私を見ている。

みんなは、私をどう思う?

不快感?
嫉妬。
嫌悪、
私の体を包む、
「あおい」の文字が並んだ赤いTシャツが、
何となく、重い。


刻々と、開演に近付く。
みんなが身だしなみを整える脇で、鏡の前で、何度も振りを確認した。
直前に飛ばないように、体に覚え込まさなきゃ。

「できてるやん!俺より上手やで」
のっくんが微笑んで、鏡越しに私を見る。
「…でも、顔、真っ青やね?ほんまに、無理せんで」
「うん…」
「…できるんやったら、できる、できないんやったら、できないって…言わんと、みんな困るから」

頷いた。
…そうだよね。
やるって決めたら、やらなきゃ。

「大丈夫。できる」
「うん、できるできるできる!」
髪の毛をくしゃくしゃって撫でられたら、少し気持ちが落ち着いた。

「…俺思うねんけどさ、Aちゃん緊張してるかもしれへんけど、何か俺はちょっと楽しみで」
「…そうなの?」
「うん、Aちゃんと一緒のステージ立てるなんて、思ってもみいひんかったからさ」

「…のっくん、いっつももっと緊張してると思ってた」
「してるで?でも、Aちゃん俺らのために凄い頑張ってくれてるからさ、俺も頑張ろーって」
「……頑張ってくれるみんなの、足を引っ張るかもしれなくて…正直、私怖いよ…」

のっくんは、ほんの少しだけ固まってから、
あはは、って笑った。

「やっと、珍しく弱音言ってくれたやん!」
…あぁ。
「ごめん、開演前にこんなネガティブなこと」
「無理してポジティブにならなくてもええんちゃう?」
「…そうなの?大人は…」
「ううん。持論!」

自然と、少し口角が上がる。
のっくんは私の頭を優しく撫でると、
大丈夫やって、って小さな声で言った。

「……歌う、つもりなんやろ?Aちゃんのことだから…」
「…」
のっくんの、大きな瞳をジッと見る。
のっくんは目をそらさないまま、
かくん、と少し首を傾げて、ちょっと笑う。
「一人じゃないんやで」

……そう。
一人きりのステージじゃない。
みんながいて、
ファンの人達の中には、
むすめん。が好きでも、私のことは嫌いな人もいる。
私のことが好きな人も、たぶん、いる。

でも、
名前も知らないたくさんの大人に、一斉に見られて、
品定めされるよりは、よっぽど楽かも。

「俺もドキドキしてる。でも、せっかくやし、楽しも!Aちゃんのほうが、楽しむ方法知ってるやろ?」

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ひな(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!!申し訳ありません、うっかり忘れてました…(_ _)更新頑張ります、よろしくお願いします…! (2018年10月7日 19時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
- 楽しみにしてます!これからも更新頑張ってください〜!あ、あと(人1)の変換ないので作るか全て(名前)に統一して下さるとありがたいです! (2018年10月7日 16時) (レス) id: aa9580c9fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひな | 作成日時:2018年10月6日 5時

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