あんなに好きで◆13.11.26 ページ49
*
にーちゃんだって、
母さんだって、
同じくらい、むすめん。が好きで、
大切にしてる。
それくらいは、わかってる。
わかっていて、
でも、何もかも自分の思い通りに進まないまま、
むすめん。は11月の福岡公演を終えた。
「A?具合悪いの?」
その日、二時間目の数学が終わって、
体育の授業のために、着替えを準備するクラスメイトたち。
その中から、ふとそんな声が聞こえた。
「…ちょっと、気分悪いだけ…」
「でも確かに顔青いね。先生に言っとくから、保健室行ってきなよ」
「最近めっちゃ寒くなってきたしさ。インフルかもよ?」
人1の周りに女子が集まってる。
さっさーがその輪にすっと混ざって、
「Aー?保健室連れてってあげよっか?」
そう、人1の顔を覗きこんだのが見えた。
「あ、いいよさっさー。俺連れてくから」
俺がそんなみんなの元に駆け寄ると、
「あー、じゃあ兄妹水入らずってことで。任せたよ」
さっさーを含めた周りのみんなは、ぱっと解散した。
人1は顔を上げて、俺を見た。
いつにも増して白くて、本当に気分が悪そう。
原因は知れていた。
教室の扉を開けて、保健室に向かう階段をゆっくり下りると、人1は着いてきた。
教室の外は凍えるように寒い。
人1はゆっくりゆっくり、階段を降りた。
俺もそれに合わせた。
「………どうすれば、よかったのかな」
そして、小さな声が、
俺たち以外、誰もいない階段に響いた。
俺は黙って人1を振り向いた。
「…にーちゃんは、お仕事を続けてたほうが、やっぱり幸せ なのかな」
そして、そんな言葉も。
俺は慌てて首を横に振った。
「……にーちゃんは、むすめんを続けてたい、って言ってたじゃん…歌うことも踊ることも喋ることも、あんなに好きで、だから…大丈夫だよ」
「大丈夫…?にーちゃんがむすめんに戻ってきても、むすめんはどこまで続いていけるか、分からない状況なのに…?」
人1は、珍しく、弱音ばっかり吐く。
気付けば保健室への足は、止まっていた。
「野崎さん、練習場所まで六時間以上かけてるんだよ。寝る暇なんてほとんど無いんだよ…のっくんも、休めないお仕事だから、全然寝てない、でも頑張って笑顔でやってるの……みんな大変だよ、疲れてる、もう限界かも…」
人1は身震いをした。
…急がなきゃ。
俺は人1の手を引いて、無理やり歩かせた。
「…ごめんね。なんか、八つ当たりして……」
「ううん、いいよ」
体調不良の時って、ネガティヴになっちゃうもんね。
声をかけたら、人1は少しだけ口角を上げた。
よく言うよ◇13.11.29→←進めば進むほど◇13.10.23
81人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひな(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!!申し訳ありません、うっかり忘れてました…(_ _)更新頑張ります、よろしくお願いします…! (2018年10月7日 19時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 楽しみにしてます!これからも更新頑張ってください〜!あ、あと(人1)の変換ないので作るか全て(名前)に統一して下さるとありがたいです! (2018年10月7日 16時) (レス) id: aa9580c9fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひな | 作成日時:2018年10月6日 5時