もしも魔法使いになれたらIV (ページ9)

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159んなことページ9

＊

「プリペンド！」

気持ちいいくらい綺麗に、
５つの的のほぼ真ん中から、煙が上る。

拍手が起こった。
のっくんは杖を持った右手を下ろして、
僕の隣に座り込んだ。

「のっくんって、ほんま凄いんやなぁ」
声をかけると、のっくんは照れ笑いをした。
俺たちの前では、次の生徒が射撃テストに臨んでいる。

のっくんの年は俺の一個上だけど、
単位が足りてないから、俺と同じ授業を受けてる。

「そんなことないで。スタミナ無いし」
「もしのっくんが俺と同じくらい授業受けてたら、俺代表生降ろされてたかもしれへん」
「んなことないって」
「謙遜せんといて！本気で思ってんねん」
「そう？あは、ありがとうね」

何より、今までほぼ授業に出てないのに、
こんなに優秀なのが、凄い。

他の生徒の助けを借りたとはいえ、
Aちゃん奪還作戦の時に、敵地を無傷で駆け抜けただけある。

実は、のっくんを呼ぼうって言い出したのは、白服さんだった。
もしもの時＿＿＿Aちゃんが、俺らの声に応えたなかった時のために。
実際、のっくんが来てくれたおかげで、何とかなった。

その日それを知ってたのは、白服さんと俺だけで、
あおいくんに、「生きて＂八人＂で一緒に帰ろう」って言ったんやけど、気付いてたかな。

「…ぷんちゃん」
「ん？」
「Aちゃん、大丈夫そう？」

って、珍しく少し真剣な顔で俺を見るから、
思わず笑いだした。

「何で笑うねん」
「いやぁ、みんな健気でかわいいなって。二番くんもあおいくんも、口を開けばそれなんやから」
あおいくんなんて、一番Aちゃんのこと見てるはずなのに！

「…俺も色々責任感じててさー」
のっくんは自分の足元を見つめて言った。
「でも、それAちゃんに言ったとしたら、俺が責任感じてることに責任感じそうやろ？そう思うと俺も辛い。分かる？」
「うん、分かる」
「だけど命はかけてほしくないねんなぁ……理想は、学校の中で座学だけやってて、襲撃が来たら一番にシェルターに逃げ込んでほしいんやけど、そうもいかないし」
「そんなん今と真逆やん…」

今や昼間は郊外を任務や訓練で駆け抜けて、
警報が鳴ったら一番に外に駆け出す、Aちゃん。

「代わりに俺が訓練も任務もするから、Aちゃんには俺が帰ってきたら、一緒にコーヒー飲みながら、今日あった楽しい話とかしてほしい！」
「何それ、Aちゃんお嫁さんみたいやな」
「そのうちお嫁さんになってもらおうかな」

「え？」

素っ頓狂な声が出た時、
テストの順番が回ってきて、名前が呼ばれて、
慌てて立ち上がった。