もしも魔法使いになれたらIV (ページ5)

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あおいは、私の方を振り返って、頷いた。
「…信じるよ、A」
そして魔法使いの手を握って、馬車に乗り込んだ。

その後に続いて、
げるたん、ぷんちゃん、白服さんととみたんも。

のっくんも、私に微笑みかけて、
あおいの伸ばす手を握り、乗り込む。

学校のみんなも、近くの馬車に次々と乗り込んだ。
一人残らず。

私の後ろに最後に残ったのは、二番くんだった。

馬車の方から、あおいの声がした。
「城の方から、声がする。近付いてきてる。
……急いで」

二番くんはそれに頷いて、私に向き合った。

「……A、何か、今更かもしれないけど…
追い込みすぎたかもしれない。ごめん」
二番くんは、小さな声で言った。

「…二番くんが謝ることじゃないよ」
「あおいと同じで…Aが離れてくことが、怖かったのかも」

「離れていかないよ」

ただの、ひとりよがりだったのかもしれない。

どれだけ辛い思いをしたって
弱いままの自分が嫌で、
この現状から、今の自分から逃げるように、
気付けばここにいた。

「……」

「離れたく、ないよ……本当は……本当は、私は今も、弱いままだよ……

みんなの傷が無いと、みんなの声が無いと、
そんなことにも、気付けないんだから」

みんなが見えてなかった。
それでいいと思っていた。

あおいの言う通りだった。
自分自身の血に酔って、過信して、
結局また、助けてもらった。

一人じゃないよ。
大丈夫だよ。
一緒に帰ろう。

何度も、切り離そうと考えたのに、

その言葉一つ一つが、
心に直接響いた。
優しい顔で笑いかけるみんなが、
私にとっては全部、そこに当然存在する色だった。

今、やっと、気付いた。
涙がこぼれた。

二番くんは少し笑って、
両手の親指で私の涙を拭いた。

「A。離れないでいてくれる？
これからもずっと」

「……」

「少なくとも、俺は！…離すつもり、無いよ」

顔を上げて、二番くんの顔を見る。
目に溜まった涙を擦り、しっかりとその目を見て、

「うん」

頷いた。
ちゃんと伝わるように。

口角を少し上げた、その瞬間、

ふわっ、と体が高く持ち上げられた。
「わっ！」

二番くんが、私のお腹を抱えて、笑った。

「言ったな、A！」
そしてそのまま、馬車に乗り込もうとする。

「帰ろう、A。
お前がいないと、俺もみんなも、ダメになっちゃうんだ」