分かるけど◆13.02.02 ページ49
*
白服さんは、ちょっとだけ、厳しい人だ。
ストイックだし、真面目で、妥協しないし。
すごいけど、ちょっぴり怖い。
「でもさ、そんなに追求しすぎんのは無理やって」
少し気まずそうに、ぷんちゃんは白服さんに笑いかけた。
小さないつものダンススタジオは、男10人弱が集まれば、すぐ埋まってしまう。
「お客さんからお金を取ることなんだから、ちゃんとしたものを見せないといけないじゃん」
「それは分かるけど、頻繁に練習すんのも無理な状況やし…」
その他のみんなは、黙って二人を見てる。
時計は20持を回った。
演目を当初の予定より豪華なものにするか、
質を落とすか、検討中。
話し合いはまだまだ続きそうだった。
「やるって決めたんならやってもらわないと。みんな忙しいのは分かるけど…時間は自分で作るしかないし、スタジオに集まれなくても、できることはある」
黒縁の眼鏡をかけた白服さんは、真顔でそう言った。
「焦りすぎやって!白服さんだって仕事あるやんか、支えてくれるあおいくんの親御さんだって、Aちゃんだって…無理することないで」
「焦ってないよ。このままだったら、全員で集まって練習できるのはたった三回だよ?しかも短時間で……失敗は嫌だ。たくさんの人が応援してくれてる」
色んな踊り手さんとか、ニコ動関連の人達が、
俺たちにたくさん声をかけてくれた。
力になるけど、それ以上に頑張らなきゃ、ってプレッシャーを感じたりもする。
「まあ、二人とも落ち着いてや?どっちの言いたいことも分かるけどさ」
そこでのっくんが、はははと笑って言った。
「俺もそんな東京に長時間はいられへんけど、動画とか送ってもらえれば、頑張るからさ…」
「俺も!大丈夫だよ。スキマ時間使うのとか慣れてるし」
げるたんも少しぎこちなく笑う。
「俺比較的暇なほうだと思うし、雑用とか手伝うよ。そうすれば、スタッフの負担も減らせる」
二番くんは眠そうに目を擦りながら言う。
白服さんはみんなの顔を見て、
少し黙ると、立ち上がった。
「…ちょっと、頭冷やしてくるよ。外出てくる」
「あ…うん、気をつけてね」
ぷんちゃんがその姿を目で追う。
ぷんちゃんは繊細だし優しい人だからか、笑ってても少し、眉が釣り下がってる。
あ、だからって白服さんが嫌なやつ、ってわけじゃないけどね。
その後に、俺の隣にいた人1も立ち上がった。
「どこ行くの?」
「…ちょっとトイレ…」
って、ずいぶん暗い顔、トイレに行くような形相じゃない人1は、スタジオをあとにした。
どっちもどっち◇13.02.02→←この世界が◇13.01.26
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、 - オリジナルフラグちゃんと外しましょう。違反行為です (2018年8月12日 13時) (レス) id: e44f2de31d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2018年8月12日 13時